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❀ 3-13

「アレシアさんの弟子お前かよ。」
「成り行きで~。色々あったんだよ。」
「なんだよ、色々って。」

 


突然訪ねてきたクロノス学園長に紅茶を出しながら、タテワキが声音低くハトコに問う。
普段は魔法使いとしての格好で扉を開けること無く壁を通り抜けて不法侵入をする学園長だが、
今日は元生徒の前だからか、学園にいた時と同じように白いスーツを身に纏ってちゃんとチャイムを鳴らしてやって来た。
後で詳しく説明するよ、ととぼけたサジを軽く睨み付けてから、アレシアの前に腰掛ける。

 


「ルフェ達はどうしたの?」
「街へ買い物です。」
「久々に友達と楽しく過ごせてるみたいでよかったわ。いいリフレッシュになるわね。」
「リフレッシュってことは、大仕事が待ってるってことですね。友達を呼んだものこのためですか。」

 


優雅な仕草で、アレシア学園長は紅茶を飲んだ。

 


「ルフェ本人のため、そしてルフェのために頑張ってる子を引き合わせただけだわ。
でも、そうね。利用したと言えばそうかもしれない、」
「まだあの子は、核でいなくてはいけないんですか?コルネリウスくん達が円卓議会を開いて
市民を守り魔族とも戦えるようにしてくれているというのに。
ウィオプスだって、魔族とは関係ないんですよね?」
「人が死にすぎたのよ。」
「ハインツの仮説、ですか。」
「もう仮説ではないと予言の巫女から証言を得たわ。巫女はまだ、メデッサ先生と共にいてくれています。」
「その情報はどこで?」
「私の優秀な弟子が、メデッサ先生の痕跡を見つけたの。凄いでしょ。」

 


にっこり微笑んだアレシアの脇に控えていたサジが、ピースサインを向けてきたのを唖然とした表情で見つめた。

 


「痕跡、ですか?俺達や大先生がいくら探しても見つからなかったのに?」
「おそらく、予言の巫女様が温情で残しておいてくれたんでしょう。私達がルフェを守っているとあちらは把握している。
といっても、さっさと接触して情報共有した方がいいとこちらは考えるけど、向こうはそう思ってないようね。」
「ということは、大方の予想通りメデッサ先生は雲隠れしなければならない理由があるということですね・・・。」
「いつ魔女を手下にしたロードという男がこちらを訪ねてくるかわからない。
こちらの見えぬところで人は次々さらわれている。マナの充電も終わってしまうわ。
大先生が因果律の計算を頑張ってくれてるけど、足止めになるかどうかもわからない。第一、先生の専門じゃないし。」

 


ハインツがいてくれればー・・・。そう思ってしまったが、タテワキは口には出さなかった。
守れなかったのは自分の責任だ。
それに、あの時命が助かっていても、師の意思が裏切られたと知った彼が協力してくれたがどうかはわからない。
そこへ、ルフェ達4人が帰って来た。
学園長は幾度となくこの家を訪ねてきたが、ルフェと顔を合わせるのは学園で退学を申し出た日以来となる。
急に雰囲気を柔らかくしたアレシアが椅子から立ち上がり両手を広げてルフェ達を出迎えた。

 


「可愛い私の生徒達!久しぶりね~。元気だったかしらー?
ルフェ、体はどう?マリーも、ヴァイオレットとの切り替えが上手くなったと聞いたわ、凄いじゃない。
ああそれと、ジノくん。司令室で大活躍だそうね。リヒトを通じて騎士団の連携も取れてると報告あったわ。」
「推薦状をスムーズに通して下さった学園長先生のおかげです。」
「ささ!久々にお話ししましょう。美味しいケーキもあるのよ。ホラ、サジ。ぼーっとしてないで用意なさい。」
「オレは弟子であって秘書じゃないですよー。」

 


うるさいわねぇ、と小言を言われながらもサジはタテワキと共にキッチンに戻っていく。
ルフェ達をテーブルとソファーに座らせて、アレシアはぽんと手を叩いた。

 


「ケーキの前に、少しだけこれからのことを話しておきましょう。」

 


ジノとリヒトがわずかな反応を見せたが、ルフェは黒い真っ直ぐな瞳で学園長先生を見つめた。
特別対策班の存在意味を聞いたかと言われ、昨晩リヒトからさわりを聞かされていたので、素直に頷く。

 


「ルフェは元老院との約束がまだ生きて居るので、引き続きウィオプス退治をしてもらうけど
同時に、ウィオプスを捕らえる方法を探って欲しいの。」
「捕らえる?」
「ウィオプスに実態はありませんよ、学園長先生。」
「でも存在している。ハインツ魔導師とアルバ魔導師の因果律理論を知った今なら、尻尾ぐらい掴めるはずよ。」
「いっそ尻尾でもあった方が捕まえるのは楽でしたよ。」

 


リヒトの嫌味を受け流して、学園長先生はルフェに顔を向けた。

 


「仮説通りウィオプスが死んだ魂の集合体で、こちら側に押し出された存在ならば、帰巣本能が働いているはず。
そこに因果律理論を組み込む術式を完成させれば、理論上は可能よ。出来るわよね、ジノくん。」
「無茶を仰いますね・・・。」

 


有無を言わせない笑みを向けられて、ジノは頬を掻いて頷くしかなかった。

 


「時間がないわ。」
「予言とやらを開示してくだされば話は早いのですが。」
「それは無理。」

 


再び有無を言わせぬ笑みを向けられ、リヒトは小さく舌打ちをした。

 


「いじわるしてるわけじゃないのよ。私も全ては聞かされてないし、予言を知った人間が動く事で
未来が変わる恐れがあるから、ごく一部の人間にしか提示されていないの。
全て知っているのは、メデッサ先生だけ。
そこで、サジ。メデッサ先生を探して連れてきて頂戴。」
「はい!?」

 


ちょうどケーキを運んできたサジにさらっとそんなことを告げる。

 

「無理ですよ!大先生ですら捕まえられない大魔導師級の人ですよ?
オレが痕跡見つけたのも向こうの恩恵で―」
「出来ないなんて答えはいらないって何度も言ってるわよね?」
「・・・・・・・・・はい、マスター。」

 


三度目の例の笑顔に、顔を青くしたサジが首を思いっきりもたげて喉の奥から声を絞り出して返事をした。
あのサジが顔を青くするほどだ。一体彼はどんな修行をして、
アレシア学園長のどんな恐ろしい一面を体験してきたのだろうとジノとリヒトは人知れず背筋を震わせた。

 


「そうだ。貴方達には教えておくわ。元老院の独裁に異を唱え、裏側から監視し続けていた大先生の師匠が創設した我々の組織。
長らく名称は付けなかった。それは魔法院にえん罪でもなすりつけて捕まらないように。団結力と正義心を盾に暴走しないように
でも世界の存続がかかってそうな現状、名称は必要だということになったの。
”カルペ・ディエム”、それが我々の名前。貴方達は所属してるわけではないけれど、支援は最大限するつもり。」
「つまり業務委託ですね。でも俺達は、あくまでルフェのバックアップです。」
「言われなくてもわかってるわ。拒否権はあるから、安心なさい。」
「利用する気は満々ですね。」
「リヒト・・・!」

 


殺気立ってきたリヒトをジノが慌てて止める。
目の前にあるケーキに気を取られないほど、腕組みをして警戒心を隠そうともしない。

 


「安心しなよキルンベルガー君。俺が付いている限りその”カルペ・ディエム”とやらにも元老院にもルフェを利用させないさ。」
「あら。メデッサ先生の思惑かもしれなくってよ?」
「あの人はルフェを利用しようだなんて考えないですよ。」

 


難しい話は終わりだ、とタテワキがテーブルにサンドイッチなどの軽食も並べていく。
彼が着席してことで、空気は柔らかくなり話は自然と終了となったが、ジノだけは、先程タテワキが発した言葉に
学園長先生が苦い反応を見せたのを見逃さなかった。
メデッサ先生には、一体どんな秘密がついて回っているというのだろうか。

 

 

 


「ごめんねーマリーちゃん連れてっちゃっうけど。」

 


翌日。
特別対策班は魔法院の所属でありながら元老院ではなく代議員直下の組織なったが
”カルペ・ディエム”の息も掛かっている事には変わりなく、アレシアから言い渡された任務に当たることになった。
もちろん、ルフェはウィオプスが出現した時点で現場へ向かわなければならない。
サジは師匠であるアレシアから無茶ぶりされた、メデッサ魔導師を探すという難題をこなすため出かける準備を済ませ、
隣には同じく支度を整えたマリーも居た。

 


「単独はさすがに不安だったし、攻撃型の護衛が居てくれた方が安心なんだ。色々と。」
「女の子に護衛させるとか、最低だぞお前。」
「オレとヴァイオレットちゃんの連携すごいんだよ!?」
「威張るな。お前1人で行ってこいよ。」
「冗談はさておき、マリーちゃんの能力なくしてメデッサ魔導師は見つからないんだよ。」

 


マリーに探知系の能力なんてあっただろうかと首を傾げたルフェの手を、マリーが握った。

 

「さっそく離れてしまいますが、心はいつもルフェの隣にあります。
必ず、メデッサ先生を見つけてきます。」
「気をつけてね。」
「すぐ会えますよ。」

 


マリーの笑顔はお日様みたいだと、ルフェは改めて思う。
優しさと慈愛に溢れて、隣にいるだけで暖かい。
サジはマリーを連れ立って転移魔法でタテワキ邸から姿を消す。
2人がいなくなった床を見つめるルフェの頭を、リヒトが小突いた。

 


「ぼーっとしている間はないぞ。俺達も出かける。」
「どこへ?」
「ウィオプスの出現パターンを計算して次の予想位置をしぼったんだ。
昨晩のうちに学園長先生に言われた術式をリヒトと一緒に基礎を組み立たから、さっそく実験しに行こう。」
「優秀な子達がいると仕事が早くて頼もしいね~。」
「タテワキ先生、もう先生の演技いいですよ?」
「もうバレてたか。結構気に入ってたんだけど。
まあちょうどいい。ルフェを任せていいかい?魔法院の私室に、ずっと取りに行きたいと思ってたんだ品がある。」
「先生、言ってくれればいつでも付いて行きましたよ?」
「ルフェを連れていくと色々問題があるんだよ。厄介な奴も沢山いるし。」

 

タテワキはルフェが魔法院と約束を結んでからずっと隣で支えてくれていた。
子守をしながらでは、先生も用事を済ませられなかっただろう。
今更になって自分しか見えてなかったと反省する。

 


「未成年魔法使いでも、転移出来るんだっけ?」
「はい。騎士団所属の俺は許可をもらってます。長距離も慣れましたので安心してください。」
「ああ。任せたよ。」

 


準備を終えた後、笑顔で手を振るタテワキに見送られ、ルフェはリヒトの転移魔法で家から出た。
タテワキの姿が霞んだ瞬間、胸が苦しく締め付けられた。
ホームシックの時に味わった痛みより、より強くて重い。
それがなぜだか理解する前に、目の前に飛び込んできた光景に驚いた。
降り立ったのは、どこかの街だった。
白い建物が目立ち、至る所に花が飾られ、ちょうど市場が近かったらしく、人で賑わっている。
世界各地へ派遣されていたルフェだが、魔族との戦闘が始まってから人がこんなにいる土地に足を運んだことはない。

 


「人がこんなに・・・。皆避難してないの?」
「此処がその避難地だ。ストラベル国のトラッド=アンジェ県。」
「あ。マリーの実家があるとこ?」
「そうだ。ヴェルディエ家を始め貴族が最後まで渋ってたが、レオンが説得して無事避難地指定された。」
「ウィオプスの所へ行くんじゃなかったの?」
「その前にお前に会いたいって奴がいる。顔合わせしておいた方が良いと思ってな。」

 


不安そうなルフェにジノが笑いかけて、先頭のリヒトに続いて通りを歩き出す。
戦闘中だと言うのに、すれ違う人々は楽しそうに笑っていることにルフェは戸惑うしかなかった。
辺境の地で混乱し、不安に呑まれ発狂する人々の悲痛な声ばかり聞いていた。
絶望に歪む顔しか見てこなかったし、ルフェ自身も心が荒んでいたので世界は色を無くしていたはずだった。

 


「ウィオプスは誰にも倒せない。ルフェは此処にいる人たちを守ったんだよ。
ルフェがいなかったら、もっと沢山の人が命を落としていた。」

 


ルフェの様子に気づいたのか、隣にいたジノが微笑みながらそう言葉をかけてくれた。
真心が現われたその微笑みがどこか大人びていて、離れたていた2ヶ月という時間の重みを痛感する。
ジノやリヒトは自分より大変な場所で戦っていたに違いない。
自分は常にタテワキ先生やオークウッド先生に守られていた。戦場の中でもウィオプスを戦う以外仕事は課されることはなく
実際、命の危険に晒されたことはない。
彼らの成長が誇らしい反面、経験の差に恥ずかしくなった。
素直にジノにありがとうと返して、ズンズンと人混みを進むリヒトにしばらくついていく。
人通りを抜けると、静かな住宅地に入り、細い小道を選んで歩き続ける。
やがて、大きな屋敷が現われた。
横に広い3階建ての木造建築物で、茶色を基調としていて落ち着いた雰囲気がある。
閉ざされた背の低い門の前に、体格の良いスーツの男性が数人居たが、リヒトの顔を見ると門を開けてくれた。
スロープを抜け、玄関の扉をまた別のスーツの男性が開けてくれ、リヒトは慣れた様子で屋敷内もズンズンと進む。
中も質素な印象で、木目が生かされた木の階段で2階に上がり、奥の大きな扉を、今度は執事らしき初老の男性が開けてくれた。
わけもわからず、黙って部屋の中に入るルフェは、格子がはめ込まれた窓の前に経つ長身の男に驚いた。
暗めの黄色地に細やかな装飾が施されたローブを肩から掛けた色黒の男は振り返り、そして微笑んだ。

 


「久しぶりだな、ルフェ。」
「フフ。レオンじゃないみたいよ、その格好。」

 


貴族の服を纏うレオンは見慣れないが、その優しい双眸は何も変わってなかった。
アテナ女学院で自分を見つけ、クロノス学園で支えてくれた頼もしい存在。
彼もまた、2ヶ月会わない間に纏う空気が凜々しく、より高尚な存在に変わっている。

 


「ねぇ、僕のこと気づいてる?」

 


部屋のやや右寄りに置かれた一組のソファに座る黒髪の青年が声で割って入ってきた。
貴族の服を纏っており、全身黒色で統一されているが縁取りや装飾が上品に仕立てている。
青年の顔をじっと見つめていたルフェは、驚きの声を上げた。

 


「シュヴァルツ君!?」
「やっと気づいたか。」
「殿下の話は内密だから、ルフェにも内緒だったんだ。説明するよ。」
「で、殿下?」

 

立っていたレオンも、ルフェ達3人もソファに腰掛け、一通りルフェに話をする。
レオンは最初から貴族の息子だと隠してなかったが、
同級生が王族の血筋で、現在第2王子として指揮をとり新しい組織を率いているという。
ルフェから見て、彼は常に生徒会長や副会長の後ろに隠れ、目立つのは嫌っていた印象があったので
今の彼は知らない人のようである。
まだ現実が飲み込めず目をぱちくりさせているルフェにシュヴァルツがため息をついて、背もたれにもたれかかった。

 


「王族ぶるつもりはない。僕は所詮お飾りで責任を押しつけるために表舞台に連れて込まれただけだ。」
「文化祭で見事な女装をしていた人と同一人物とは思えなくて・・・。」
「あの時の記憶は消去しろ!!」

 


顔を赤くして怒鳴る王子に、レオンが声を上げ笑い出した。
空気が柔らかくなったところで、脇に控えていた執事が紅茶を並べていく。
懐かしさに身を任せ、学園で過ごした思い出話と近況報告に花を咲かせた。
ルフェは自分の事に一生懸命で、いかに周りを見ていなかったか痛感する。
人々のために、友達はこんなに頑張ってくれていたというのに。
用意されたスコーンを食べ終えたリヒトが、紅茶カップをソーサーに戻した。

 


「そろそろ本題に入ろう。大人達にバレる前にルフェに話をしておきたい。」
「やっぱりタテワキ先生の家はダメ?」
「盗聴器がいくつか。周りに大先生の部下らしき姿もあった。」
「リヒト、どういうこと?」

 


リヒトが僅かに眉根を寄せて目をそらしたが、腕組みをして口を開いた。

 


「タテワキ先生の家は常に見張られてた。

俺が気づいたぐらいだ。当然先生自身も気づいてて、盗聴器などそのままにしているのだろう。

監視を付けて、盗聴をしているのは大先生の組織だ。大先生は、何かを隠している。」
「何かって・・・もしかして、予言のこと?それはメデッサ先生が隠してるって・・・。」
「俺とレオンは、大先生は予言を知ってるんじゃないかと疑っている。」

「大先生は味方でしょ?」
「もちろんだ。夏合宿では世話になったし、いい人だ。
だが、論理的な一面があるのを感じている。目的のためなら非人道的な手段もやむを得なし。
時に恐ろしいことを言ったりするんで、俺もシュヴァルツもビックリさせられるんだ。」
予言の内容とこれから起こることを知ってるからこそ、極端な思考をして焦ってるんじゃないかと俺達は考えている。」
「大先生側が何を隠しているか知らないが、キーパーソンがお前ってことは確定している。」


シュヴァルツが真っ黒な瞳を向けてくる。
言葉は厳しいが、目の奥は優しさが垣間見えたので、胸の奥がざわつくのも少し緩和出来た気がした。

 


「シャフレットの件は聞いた。一時永久封印すら検討された膨大すぎるマナ。
ウィオプスを唯一倒せて、魔女すら狙っている。イェーネ、自分の出生で覚えてることはないか?」
「え?」
「レオンとリヒトが覚えていた予言の一部によれば、お前がウィオプスを倒せることが記されていた。
シャフレットの大惨事を起こした子供が、ウィオプスに対抗する唯一の武器。これは偶然ではない気がする。」

「出生って・・・私、何も覚えてない。予言だって、知らされてないし・・・。」
「なんでもいいから思い出せ。些細な情報でも今は欲しているんだ。」

「こらこら。そんな責めるような言い方するなよ、王子サマ。」

 


そんなつもりはない、とシュヴァルツは口をとがらせクッキーに手を伸ばしてかじりついた。
レオンが代わりに話を続ける。

 


「ルフェを疑ってるつもりもないし、大先生が嫌いなわけじゃない。
ただ俺達は民を守りたいだけ。その為にはロード卿が率いる魔族達をさっさとどうにかしたい。

魔女、魔族を含め大人達は予言とやらにこだわっているし、予言に答えが記されているはずなんだ。
にも関わらず、肝心の核の部分は大人達に隠されている。それがもどかしい。
だから俺達だけでも協力しよう。もし大人達が出そうとしてる答えが気にくわなかったら、全力で駄々をこねる。」
「お前も大人側の年齢だろ。」
「まだ24ですー!」


ルフェは手の中の紅茶を見下ろした。
難しい話はわからない。大先生が敵だなんて思えないし、疑いたくも無い。
けど、仲間が言ってることも正しいんだろう。
ルフェは顔を上げた。

 


「気になっていたことがあるの。巫女―魔女の人たち、初めから私の事知ってたの。

私はシャフレットの件からずっと孤児院にいたから、知り合いはいないはず。
メデッサ先生とも知り合いだって言ってる魔女もいたから、私の力のことも聞いてたんだろうけど、

ずいぶん友好的だなって、ずっと不思議だった。

私が予言に出て来て、ウィオプスを倒せるって初めから知ってたんじゃないかな。
そこで、ね。大人達が何も教えてくれないなら、魔女に聞いてみるのはどうかな?

私には、何故か友好的だし、頑張れば何か教えてくれるかもしれない。
もし教えてくれなかったとしても、再び次元を切り離せないか、協力して考えることは出来ないかなって。」


魔女は人間とは一線を引いている。
人間の味方はしてくれない。現在も、魔族に大地は荒らされて被害は甚大だが、魔女は静観を貫いている。
ジノが顎に指を起きながら、なるほどと低めの声を漏らした。


「あちらには不可能で、こちらには可能な手かもしれません。
大先生は直接魔女と関わりが無く、あるとすればメデッサ魔導師ですが、今音信不通。
ならば、ルフェの声の方が届きやすいですね。」
「だがよ、魔女さんはもう別次元に切り離すのは不可能だって言ってなかったか?
ハインツ魔導師の帰還で因果が結ばれちまったんだろ?」
「私達より高度な魔法を持ってる人たちだから、ヒントぐらいは得られるかもしれない。」
「可能性があるなら、動かないという選択肢はない、ということですね。まずはそこから責めてみましょう、レオンさん、
魔女とのコンタクトは任せたよ。」

 


ルフェが頷くと、王子とその側近である貴族当主が立ち上がった。

 


「会えてよかったよ、イェーネ。僕に出来る事は少ないけど、助けが必要なら言って。
君は重要人物だ。世界にとっても、僕らにとっても。そして今でも友達だ。」
「ありがとうシュヴァルツ君。」
「ウチのお姫様をしっかり守れよ、リヒト。」
「お前もさっさと貴族達に媚び売って権力掌握してこい。バックアップが貧弱じゃ困る。」
「ハッハ。頑張るよ。」

 


執事が扉を開け、シュヴァルツが退室し、後に続くレオンは去り際、ルフェの頭に手を置いた。
相変わらず大きくてゴツゴツした、安心する温もりだった。

 


「気をつけてな。」
「レオン・・・。また会える?」
「お。ずいぶん可愛いこと言ってくれるようになったじゃないか。
呼んでくれれば、いつでも駆けつけるよ。」

 


最後にウィンクを落として、レオンも去ってしまった。
世界の前線に立つ2人は大忙しで、そもそも謁見すら難しい立場だったはずだ。
ルフェがリヒト達と合流出来たこのタイミングで、時間を作ってくれたのだろう。

いつでも、は無理かもしれないが、その気遣いが嬉しかった。
俺達も出よう、とリヒトが転移魔法陣を絨毯の上に展開させる。
玄関を潜ることなく、3人は屋敷を後にした。

 


降り立ったのは、ルフェにとっては見慣れた光景だった。
乾いてそして埃っぽい、視界いっぱいに広がる荒野。
所々土はえぐられ、木々は倒されている。
先程の街とは打って変わって、人の気配は全くしない。
市場の美味しそうな匂いも、花の彩りもない。

 

「もう自由な身ではないくせに、調子のいいことを言う。」
「さっきのレオンさんの発言?不自由さを一番歯がゆく思ってるのは本人だろうね。」
「フン。それよりルフェ。魔女とのコンタクトなんて出来るのか?」
「うん。何かあれば呼んでくれって、二番目の魔女さんに連絡方法教わった。」
「お前が人気者で何よりだよ・・・。世界を滅ぼしかけた魔女と連絡先交換済みとは恐ろしい。
まあとりあえず、気を取り直してまずはウィオプスだ。あちらの仕事もこなさないと怪しまれる。
計算だとこの辺りに出現予想なんだが。」
「やっぱり計算は不可能かもしれないね。神出鬼没が代名詞だし。」
「昨晩の努力をさっさと諦めるな。此処がダメならあと2カ所―」

 


言葉の途中で、険しい顔になったリヒトが勢いよく振り向いた。
何も無い荒野に、ドレスの裾を風に遊ばせる影が1つ。
グレーの長い髪をしているが、左右の一部だけ黒いメッシュが入って入る。
リヒトはその人影に見覚えがあった。
すぐさにルフェを背中に隠す。

 


「あの人も、魔女ね。」
「そうだ。一度戦って退けたが、あの時は騎士団の連携があったからこそ。俺達じゃ無理だろう。」
「逃がしてくれる雰囲気でもないね。」

 


魔女がこちらに近づくにつれ、凄まじい殺気を全身に纏っているのが嫌でも感じてしまう。
敵意が混ざったマナの反応に、まだ距離があるのに肌がピリピリと総毛立つ。
リヒトが剣型アセットを取り出し、ジノは杖を握った。

ルフェは全身にマナを纏い、万が一が起きてもすぐ放出出来る体制を整える。

 


「こらこら。お待ちなさいティティン。」

 


空から灰色のカラスが舞い降りたと思ったら、美しい女の姿になった。
6番目の魔女だ。ルフェは何度か顔を合わせている。
リヒトは小さく舌打ちをして、ジノは焦りを見せないように拳に力を込めた。
1人でも厄介な魔女が2人。
こちらは新人魔法使いが3人のみ。どう転んでも勝ち目はないし、逃げることすら不可能だ。
焦る人間の子らを余所に、舞い降りた灰色の魔女が腰に手を当てて小柄な魔女に向き直る。

 


「邪魔をしないで下さい、ロノエ姉さん。」
「私達はしばらく大人しくしてなさいと怒られたばかりでしょ。」
「それは姉さんも同じではないですか。お互い人間にしてやられました。私は借りを返しに来ただけです。」
「あら。ティティンもあの金髪の子に?」

 


数日前。
ジノ達と再会した時のことを思い出した。
灰色の魔女に襲われ、吹雪の中にいた仲間達が助けてくれて、魔女はいなくなっていた。
あの時もリヒトが因果律とやらを使って魔女を退けたのだ。

 


「姉さん。私達の隙を突けるぐらいの実力者です。持ち帰れば、あの方もお喜びになります。」
「そうね。確かにじっとしているのに退屈していた所よ。」
「散歩中に向こうから襲われたと報告すれば問題ありません。」
「フフフ。ずる賢い子ですね。」

 


魔女が並んで歩き出した。
近づく度、肌に感じるプレッシャーが高まっていく。
この中で一番マナが弱いジノは、額に汗を溜め自分じゃ抑えが効かないほど手が震えだしてしまい
リヒトが支えるように肩に手を置いてやる。
どうしたらいいか、3人それぞれ思案するが、名案はそんなにすぐ降りてきてはくれない。
ルフェは、最悪2人が逃げ切れるように全身に溜めたマナの放出を始めた。
ジノが気づいて叫び、リヒトが強制転移魔法陣を展開するが、魔法陣は瞬時に消され、ルフェのマナがゼロに戻された。
迫る魔女2人がやったのかと思ったが、視界に、毛先に青いグラデーションの掛かった黒髪が揺れた。
長い前髪で片目を隠した、美しい女性が目の前に立っていた。
ハインツさんが亡くなった時、ロードと名乗る男から助けてくれた魔女の1人だと気づいた時、頭上から影が落ちてきた。
手にしていた2本の棍棒で魔女2人に振り下ろすのは、これまた美しい女性だった。
棍棒は魔女2人に躱されたが、今度は横凪ぎに払うと、小さな魔女と灰色の魔女は後方へ逃げた。

 


「たしか、4番目の巫女さん・・・。」
「グリテン。あちらで暴れているのが5番目の巫女グリトン。モロノエ姉さんに頼まれて、助けに来た。」

 


凜々しい雰囲気のグリテンは、何も無い左手に武器を取り出した。
前見た物と同じ、銀色の剣だった。
前回は気づかなかったが、芸術品のように繊細で美しい装飾が施され、柄の部分に青い宝石が埋まっている。
と、棍棒使いのグリトンが盛大に吹っ飛ばされながらルフェの前で一回転を決め、地面に線を描きながら停止した。

 


「手を貸すわ、グリトン。」
「麗しい姉さんの手を煩わせたくありません。どうか、そこでグリトンの戦いを見守っていてください。」
「ロノエとティティン相手じゃそうもいかないでしょう。」
「姉さんに見られていると思うだけで、無敵です。妹達に負けるわけいきません。」
「あらあら。自信満々ですねグリトン姉さん。姉妹同士では戦わないと決めたのではないのですか?」
「お前達が引くなら戦いませんよ、ロノエ。」


魔女が4人も揃ったせいで、ジノは胸を押さえ息苦しそうに呼吸を繰り返し、ジノを支えるリヒトも顔色が悪くなる。
唯一耐性があるルフェが、2人の手を引いて後ずさる。

 


「リヒト、隙を突いて転移魔法開いて。きっと飛ぶ時間はグリテンさんが稼いでくれる。」
「わかった。」

 


2体2で睨み合ってる魔女達はしばらく言葉を交わしていたが、痺れをきらした一番小さい魔女がマナを放ち戦いが始まった。
意識が完全に逸れたのを確認して、リヒトが足下に魔法陣を展開する。
灰色の魔女が転移に気づいたが、もう遅かった。
術は発動し、体がどこかへ飛ばされる―――。

 


「お前はダメ。」


ルフェは、何者かに手首を掴まれた。
自分だけ転移魔法から無理矢理剥がされたようで、目の前でジノとリヒトが消えてしまった。
武器とマナを交えていたはずの魔女4人もこちらを見つめていた。
先程聞こえた声に体の芯から震えが湧き上がった。
恐る恐る、振り返る。

 

「よう、お嬢ちゃん。久しぶりだな。」

 


魔族の長、かつて魔女達と争い別次元に閉じ込められた罪人―ロードが口元を大きく歪めながら笑っていた。

そして、その腕でハインツさんを殺した張本人―――。
ルフェが硬直して動けないのを悟ると、わざとらしく肩を抱いてから顔を上げ魔女達を見る。

 


「こらロノエ、ティティン。大人しくしとけって言ったろー?」
「その子を傷つけるつもりは毛頭ありませんでしたわよ。」
「お前らが動くと色々面倒なんだよ。」


瞬きの間に、目の前にグリテンとグルトンがロードに襲い掛かった。
だがロードはルフェの肩を抱いたまま涼しい顔で腕を払うと、触れていないのに2人の体が押され同時に吹っ飛ばされる。

 


「ほらな?魔女が集まっちまう。これ以上集まる前に散る―おっと。」

 

肩を抱いていたはずの少女がするりと逃げだし、走りながら全身にマナを込めていく。
しかし、ロードにすぐ距離を詰められ再び手首を掴まれ取り押さえられる。
なぜか、彼に触れられるとマナが強制的に散開してしまう。
タテワキ先生に暴走を止められたことは何度もあるが、それとは違う。
自分のマナを食べられてしまっているような、気持ち悪さがあるのだ。
ルフェはまだ転移魔法は使えない上に、捕まっているせいでいかなる魔法も繰り出せない。
暴れてもがくが、成人男性に腕と肩を掴まれどうにも動けない。

 


「大人しくしてれば酷いことしないからさー。」
「最低男の常套句ですよ、それ。何もしないと言いながら、いたいけな少女にあれやこれやする時の台詞です。最低です。」
「うるさいぞティティン!俺様を変態と一緒にするな!」

 

ルフェの視界には入らなかったが、起き上がったグリテンとグルトンが再びルフェを救おうと動いた気配がした。
直ぐさま悲鳴が上がる。一体何をされたのか振り返ろうとしたところで、男にそれを止められた。
何かが弾ける音と、爆風。悔しげに唸るグリテンの声が続くが、後ろを振り向けないように腕で首をぎっちり押さえ込まれた。

 


「2人に酷いことしないで!」
「これはあいつらが勝手した結果だ。抵抗しなきゃ妹達も姉を痛めつけなくてすむってのに、頭の悪いやつらだ。
そもそも、停戦するって話だったのにな。」
「それは、私を守るために来てくれたせいです。」
「お。じゃあ大人しく付いてくるか?」
「私のマナを差し上げれば、人間の世界を荒らすのも止めてくれますか。」
「俺は別に、お前のマナが欲しくて暴れてるわけじゃないぜ?」

 


蛇に肌を直接触れられたような、そんな気味の悪い、冷たい声だった。
首元を抑えていた力が弱まったと思えば、強制敵に男と向き合わされる。
視界の端で、グリトンが地面に横たわり、グリテンが灰色の魔女によって首を絞められていた。
突然、ルフェの右手に激痛が走った。拘束は解かれていたので蹲って膝を地面に付く。
青白い光がルフェの右手から溢れ、手の甲に黄色い紋が浮かび上がった。
それは元老院と約束をした神聖な紋。
激痛が走る間に紋は手の平からシールのように剥がれると、黄色い光が吹き出してチリチリという音を立てながら爆発した。
気絶してしまいそうな痛みが消え、地面に倒れ蹲る。

まだ肩で息をして額に汗をためたルフェは、自分の右手をマジマジと見下ろした。

 

「お前に絡まってた鎖は消した。」
「・・・これ、は・・・、誰にも、消せない、はず・・・。」
「ンなことどうでもいいだろ。首輪が無くなったんだ。喜べよ。」

 


ルフェの体が勝手に浮かび上がった。
力の入らぬ体は、背の高いロードと目が合う高さまで持ち上げられる。
間近で、ロードの金色の瞳を見つめる。
どこかで見たような色合いだという気になるが、痛みで朦朧としている頭では思い出せない。

「お前は生まれる前からモルモットであり、生け贄だった。飼い慣らされ汚い人間に利用されることを決められてたんだぞ。」

 


頭がガンガン鳴って、右手の痛みは神経を通って全身で悲鳴をあげている。
それでも、金の瞳が真面目な色合いになり、その奥に悲しげな色を見せると目が離せなくなってしまった。
ぼんやりした頭が見せた幻覚ではないかと疑う程に、目の前にいる男が別人に見えた。


「何も聞かされてないんだろ?大人たちから。」
「・・・?」

 


遠くで、グリテンが叫んでいた。
何かを訴えるような悲痛な音を奏でていたが、おぼろげな声は何を言っているか輪郭すら掴めない。
ただ、男の声を聞いてはいけない気がした。
なぜだかわからない。
腕を持ち上げて、耳を塞ぎ目を閉じていなくてはいけない。
遠い記憶が、そう警鐘を鳴らしている。
膜の内側で、ロードは今までで一番優しく人らしい声で言った。

 


「この世界の時間軸でいう13年前。俺は一度だけ狭間の世界から出てこちらに帰ってきたことがある。
どうしてもやらないといけない事があった。
俺はそれに失敗して、土地が1つ犠牲になった。名は、シャフレット。
土地が消えたのは、俺のせいだ。
だがそれを知った魔法院と1人の魔導師が俺の存在を隠すため、唯一生き残った子供に罪をなすりつけた。
わかるか?それがお前だよ。お前は誰も殺してないし、土地を壊してもいない。
えん罪をなすりつけられた上に、不自由な人生を決定づけられ、今回の騒ぎでは首輪まで付けさせられた。
酷い話だと思わないか?全ては、俺の存在を隠し、大昔に起こった俺と魔女の戦いを教科書に載せないための隠蔽。」


はっきりしない頭でも、辺りが騒がしくなったのに気づいた。
ルフェはロードが作った薄い膜の中に閉じ込められているのだが、外はいつの間にか分厚い雲が覆っており、天候は荒れていた。
雨こそ降っていないが、頭から角の生えた小柄な魔女が、膜に雷を落とし続けている。
外側で、魔女達の戦いが繰り広げられてるせいで気候すら変えてしまっているのだ。
膜の内側は嘘みたいに静かで、時間が止まっているかのようだというのに。
体の痛みは無くなってきたが、指先1つ動かせない。
でも、もう耳を塞ぎたいとは思わなかった。


「えん罪をなすりつけた都合のいい少女を、魔法院が守るのはなぜだと思う?
お前にはもう1つ、役目があるからだ。

それが予言だ。

その昔、女神が巫女を産んだ後、最後に産んだ9番目の巫女にある予言を残して消えた。
”女神とは相反する宇宙の意思が3度訪ねてくる”ってな。

宇宙意思とは女神が作ったものを壊すのが仕事。再生と破壊の表裏一帯を宇宙の理としているせいで、女神にくっついてくるんだ。
女神は、なんでもかんでも滅ぼす宇宙意思を嫌っていて、対抗するために巫女を産み、対策として予言を授けたんだ。
1度目の破壊は、宇宙意思とやらが俺に取り憑いて、世界を壊そうとした。

だが大地の半分を犠牲にしたところで、魔女が次元の狭間に俺ごと追い出すことに成功した。
2度目の破壊は10ヶ月程前。大量のウィオプスを同時に出現させて人間の大量虐殺。これはお前の封印を解いて防いだ。
3度目が起きる時期を俺は知らないが、予言によれば、再びウィオプスが落ちてきて人間を全て滅ぼすとある。

魔法院がお前を生かしたのは、いずれウィオプスを倒せる唯一の存在だと気づいていたから。

魔女がお前を助けるのは、予言によって選ばれた運命の子だからだ。」


思ったよりも、ずいぶんおしゃべりな人だ。
ルフェは蚊帳の外にいるような他人事の気分で、長々と話すロードの言葉を聞いていた。
痛みが引いてから、疲労感が襲ってきているせいで急激な眠気に瞼が閉じてしまいそうだった。
膜の外で必死に戦っている魔女の姿を横目に、全て忘れて眠ってしまいたかった。

 


「お前は世界のために戦う事を定められた人柱。
全てを知った上で裏で操っているのはメデッサ・クローバー。お前を育てたあの女が、お前を殺そうとしている。

たった1人でウィオプスを弔い続ければ、やがてお前のマナは尽きて肉体が滅んでしまう。
俺達は予言の犠牲者だ。命の炎が消される前に、俺の元にこい、ルフェ。あいつらの好きなんかにさせてたまるか。

俺は、――――。」

声がする。
誰かが私を呼んでいる。
分厚い雲の上には大気が広がっていて
その向こうには、宇宙がある。
流れ星は、流れるだろうか。

ルフェは静かに目を閉じた。


 

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