神宿りの木 吉良編 2
暗がりに一人ぽつんと立っている。
自分の姿すら見えないのに、ねっとりとした黒いドロドロが足首まで浸食してきているのはわかった。
体が動かない。指先も動かない。黒い何かがどんどんと体に纏わり付いてくる。
太ももにも、腕にも。
体が沈んでいく、黒い沼だ。底なしの沼に引き釣り込まれていく。
頭上から、声がした。声は何人もの声が重なったものだった。女の声も、男の声も、老人の声もする。
各好き勝手に喋っているのに、反響して届く言葉は綺麗に揃っていた。
墜ちなさい、と。
手招いている。
――嫌だ。いらない。自分が自分じゃいられなくなる。
それでも声は止まず頭上に降り続ける。
体はもう腰まで黒いドロッとした沼に浸かり、ぐるぐると巻き付いてくる触手のような沼のぬかるんだ土が顔にまで伸びる。
自分の姿が、子供になっているのがわかった。相変わらず見えはしないけれど。
最後の一押しとばかりに、大きな手が降ってきて頭をぬかるんだ地面にぐりぐりと押しつけてきた。
墜ちろ、墜ちろと。
「お願いだ!その憎しみは僕のものじゃない!僕を奪わないで!」
これは長の勤めである。そう返ってきた。
幾重にも重なった人生の軌跡がパタパタと折り畳まれて脳みそに直接入り込んでくる。
自分のものではない記憶と感情が一緒に侵入してきて、処理が追いつかず目から生理的な涙が流れた。
土が口を覆い、頭を覆い、唯一自由だった目も覆い尽くそうとしていた。
あの日の竹とんぼが、遠くなる。
・
・
・
「・・・ッ!」
頭に乗せた腕の隙間から除く天井の模様に、此処は自室だと瞬時に理解できた。
真っ暗な部屋に、点けっぱなしにしていたノートパソコンの青白いモニターが不気味な存在感を見せる。
無機質な光が、なんだか責められているみたいで気味が悪かった。
固まった筋肉を緩めようと努力するが、中々収まらない震えが邪魔をする。
肩に力を込めていたのか、首にかけて酷く凝ってしまって、頭はガンガン脈打っていた。
浅い呼吸を整えながら、先ほど見た夢の光景を遠ざけることに必死になる。
やっと肺が大きく上下するようになり、酸素を脳まで行き渡らせたことで、頭痛も大分柔らかくなる。
体を起こすと、使い古した黒張りのソファがギシリと鳴いた。
汗でシャツが体に張り付いていた。特に背中が気持ち悪い。額や首に髪がまとわりついて濡れている。
まだ指先は震え、酷く冷えていた。
足の震えを誤魔化すように立ち上がり、ソファを過ぎて、最近部屋に作った檻の向こうに近づいた。
小さな子供が、布団にくるまって丸くなっている。
口元まで掛け布団に埋もれて、呼吸するたび山が上下する。
汗だくの背中の不快感を背負いながら、流れた短い前髪の下で、自然に閉じられた瞼を羨ましく眺めていた。
シャワーを浴び直すため、吉良は音を立てずに部屋を出た。
*
赤畿の里と呼ばれる民の居住区とは別に、人間達への牽制のために作った郷がある。名前はない。
化け物から人間に墜ちた彼らにとって、名前はさして重要では無い。
建物は全て見せかけで、実際に使用しているのは地下牢と研究室、中心に建てた集会場もたまに会合で使われる。道場と呼ぶ者もいるが、やはり統一はされていない。
吉良は、張り直したばかりでまだい草の匂いが強く残っている畳の上にあぐらをかいて座っていた。
だらしなく頬杖をついているので、背は曲がっており、表情もふてぶていしい。
1ヶ月前だったか、日付は忘れたが、吉良が老達を皆殺しにしたのは紛れもなく此処だ。
血の水たまりは畳にどっぷりと広がり、鮮血は柱や壁、掛け軸にまで飛び散っていたはずだがどれも全部綺麗になっていた。新しい掛け軸の絵はあまり好きでは無いが。
彼と向かい合わせに座る灰色の着物をまとった老人は、袖を合わせ目を閉じていた。この老人を殺さなかったのは、引き継ぎが必要だったから。それだけ。
「経過は順調か。」
「ええ。毎晩悪夢でうなされてますよ。どうにかなりませんかねー。やるなら一気にお願いしたいんですけど。」
ふて腐れたように口をとがらせながら話すと、顔を手に乗せているため頬が潰れて顔が歪む。それでもまだ端麗な顔立ちに変わりは無い。やや子供じみた態度と声に咎めることもなく、ひげを生やした老人は厳しい眼を真っ直ぐ向けてくる。
「しっかりと声に耳を傾けよ。歴代長達の記憶がお主に宿ろうとしてくれている。過去に必ず答えがあるのだ。」
「過去の長が答え知ってるなら、人間の語り継ぎを漁る必要ないじゃないですかー。」
「片方の側面だけ知っても我が主はお目覚めにならない。人柱の様子はどうだ。」
「いい子にしてますよ。無口な子ですがね。」
「時が来るまで、しかと見張るのだぞ。」
はーい、とやる気も気迫もない返事を漏らす。
天井のすぐ横にある透かしを盗み見るが、今日は客人はそこにいないらしい。
此処に足を踏み入れる勇気ある人間は、後にも先にも彼一人だろう。
「我が主は微睡みに入っておられるが、完全に目を覚ますには場所の特定が必要。
そして体だが、かつて人間は、依り代と呼ばれる木や石に神を宿したと聞く。
「そこで水縹一族が隠しているサカキを使うってのはわかったんですけど、本物の木って見たことないんですよ。でっかいんですよね?どうやって祭壇に運ぶんです?」
「サカキは木ではない、人だ。」
え?と吉良は初めて反応を見せ、手から顔を上げると先代長の皺に埋もれた細い目を真正面から睨まれた。
「お主、まだ完全に引き継いでいないようだな。」
「知ってるなら教えて下さいよ。」
「わしから長の資格を役目を奪ったのはお前だろうが。責任を持ってお役目を全うしろ。覚悟は出来ていると申したであろう。」
「まどろっこしいなぁ・・・」
再び口をとがらせると、老人は腕を組んだまま視線を落とす。
「直血ではないから時間が掛かるのだ。何故儂が長を継ぐ前に、四鬼を殺さなかった。」
吉良が俯くと、さらりと音を立てて金糸のような髪が落ちた。
特に意味も無く合わせた親指同士をくるりと回し始める。若者は応えないと取り、あからさまなため息を吐く。
「四鬼の名前を出しただけで怒っていた子供の頃よりは、成長したと褒めてやろう。
これから少しずつ記憶の受け渡しがされる。だが今まで、全て揃えられた長はおらん。
四鬼でさえ、あと2つか3つというところで狂って死んだ。わしは死後に長の任を引き継いだから不完全だった。
これも、人間がいうところの必然だと儂は考えておる。純血であるお主なら、歴代長も心を開き声を届けてくださる。」
「違うよ、奴らは心を殺せるなら誰でもいいんだ。思い出も全部破って、空っぽになった僕の体に入り込んで、悲願とやらを成し遂げるつもりだ。」
「不服か。」
いいや、と即答を返して、青年はすっと立ち上がった。
「僕は人間が憎いというより、世界が嫌いだ。この世界をぶっ壊せるなら、体でもなんでも貸してやるさ。」
「引き続き主が眠る場所の特定と、サカキを探し出せ。」
御意に、とわざとらしく礼をしてみせると、先代は呆れたように片目を瞑ってみせたので、彼は子供みたいに歯を見せて笑ってやった。
集会場を出て、郷の中を適当にふらつく。黒い衣に身を包んだ下人達は、戦闘訓練を済ませてある。いざというときは人間と戦い、長である自分が許可すれば人型になれる優秀な兵士。今は非常時ではないので、時間を潰す者や、武器を磨く者様々だ。
長を引き継いだ斗紀弥には一礼をくれるが、先代や先々代を信仰しついてきた兵士も多いので、反感の目を向けられることも少なくは無い。
「吉良様。」
振り返ると、スリットが大きく入った服を纏い、やけに露出の多い部下葛ノ葉が駆け寄ってくるところだった。
彼女は女型であるせいで力が弱い。なので体のあちこちから暗器という武器を取り出せるように服の切れ間を沢山入れているんだとか。ぱっと見ただけでは、細身の体に大量の武器があるとはわからない。
歩き続けながら話を聞く。
「待鳥の長から連絡が入りました。」
「彼、人間達にバレて雲隠れしてるんじゃなかったっけ?捜索願も出されたとか聞いたけど。」
「遅くなったが、情報の受け渡しを行うと言っています。人間共に見つかる恐れがあるので動けないとのこと。」
「相変わらず上から目線の老人だな。」
「なんでも、シン様の場所を記した書物を見つけたらしいです。それを奪われる恐れもあるので余計動けないと。」
首をやや傾けて考える仕草を見せるが、しばらく口を開こうとはしなかった。
郷を横切り、外れにある門が見えてくる。今は警戒レベルが低いので門の口は開いている。門番も気も抜いている。
「あの狸じじぃが何を考えてるかわからないけど、行ってみるか。」
「吉良様自らですか?私か草薙が参りますが。」
「暇をどう潰そうか考えていたとこさ。ついでに、草薙も連れてって幹部昇進も判断しよう。」
礼を述べて、葛ノ葉も吉良の後に続き郷を出た。
指定されたポイントは、廃棄された人間の集だった。建物は石で出来ていたので残ってはいるが、所々崩れたり壊れたりしている。窓やドアは壊れ、建物内に埃が積もっている。
血痕や争いの後は発見出来なかったので、ただ単に一族ごと移動したのだろう。
十杜やエキの気配すらない、見捨てられた場所。
石や木の破片が飛び散る通路の先で、黒衣の魔術師が立っていた。
脇に控えていた葛ノ葉が暗器を取り出そうと動いたのを手で制して、彼の前まで進み出る。
「待鳥の長はどうしたんだい。殺した?」
「お前を呼び出すように頼んだだけだ。」
「どう頼んだのか、気になるところだね。」
「辰巳でさらった少年を返してもらう。」
「いきなり本題とは。君らしいね。」
色の違う両の瞳は今日も力強く、見下すこともなく威圧している様子も無いのは信頼出来る。
彼の体の輪郭が僅かにぼやけ、肩にかけている外套の裾の境界線が曖昧になる。
「おや。君の相棒、ずいぶん気配が変わったね。」
「色々あってな。」
「残念だ。同族だと予想してたのに、どうやら違ったらしい。ところで、少年の名前知ってる?名前を全然教えてくれなくて。」
「無事だろうな。」
「VIP待遇だよ。ちゃんとした部屋で3食取らせてお風呂も入れてる。ある程度の娯楽も与えている。」
「自由を制限している時点で虐待だ。こちらに返せ。」
「一方的な要求は暴力だね。交渉したいならそれに見合う対価を差し出してくれないと。」
「子供を誘拐しておいてえらそうに言うな。」
会話を重ねながら、お互いどう出るのか手を読み合っている。
頭がいい個体と話すのはこれだからたまらない。赤畿の民とは出来ない芸当だ。先代の長は別として。
しかし残念なことに、これ以上の駆け引きを楽しめないのが悲しい。
手札は1枚しかなく、返答も決まり切っている。
「僕はあの子を手放すつもりはない。あの子は、僕たちの・・・いや、僕に残された唯一の未来だ。」
微笑んだ表情のまま、しばらく吉良は黙っていた。
黒衣の魔術師も何も言わず、色の違う両の目を向けつつ、警戒を解くことはしなかった。
二人はしばし睨み合う。無言で交わされる腹の探り合いに、静寂がそっと纏わり付く。
僅かに魔術師が右手を動かすと、脇の建物から影が飛び上がった。吉良の部下が跳躍しながら、黒衣の魔術師にナイフを投げた。
上手く気配を消した一撃だったが、魔術師の脇に現れたモヤにナイフは止められ、むなしい音を立てて地面に落ちる。
その一瞬で、吉良は僕は命じてないからね、と申し訳なさそうな目線を魔術師に送る。
真意が伝わったのかは不明だが、突進してきた彼の部下―草薙の攻撃を軽々と交わし、草薙を無視して地面を蹴り、転移を使い一瞬で吉良の前へと間を詰めてくる。
主をかばうように入ってきた葛ノ葉さえも飛び越え、吉良のすぐ目の前に迫る。
きっと彼の相棒と赤畿の血が反発して見えない壁に阻まれるのだろうと予想して笑みを携えていた吉良だったが、モヤが顔を掴もうと鼻先まで伸びてきたので、慌てて後ろに飛んだ。
モヤに遅れて踏み込んできた赤い方の目が、狩人のように鋭く光る。
瞬時に笑みを引っ込めた吉良は、久々に焦りを見せ眉間に皺を寄せ、草薙へ目を向けた。
吉良が心の中で命じる。
声には出さず、ただ頭の中で喋っただけで、草薙は人の殻を捨てて鬼妖になった。
背丈が伸びた事で皮が破け赤い肌が向きだしになり、苦しみで口が割れ、目が白濁に染まる。声から漏れる声は野太く人間のものではなくなる。
この中で、人間の匂いがするのは一人だけ。狙い通り、鬼妖となった草薙が黒衣の魔術師目指して走ってくる。
黒衣の魔術師が鬼妖に意識を向けた隙に葛ノ葉と共に飛び上がって廃墟の屋根に上がる。
二人が鬼妖に狙われることはないが、戦闘の流れで魔術師のモヤに触れられては困る。
「あの子の重要性を、どうやら事が起きて気づいたようだね。」
眼下の魔術師がじろりと睨むような一瞥をくれてから、鬼妖の拳による一撃を全身をモヤ化することで流し、脇に逸れながら実体化と同時に高く飛び上がる。
吉良達がいる建物の斜め左に建つ廃墟の屋根に足をかけ、背を向けた。
姿を見失っても気配は分かるのか、鬼妖は魔術師がいる建物の支柱を殴り始めた。崩して落とす、という知性は有るようだ。
通路を挟んで魔術師が後ろ向きのまま吉良へ話しかけてくる。
「御子は鍵であるが、同時にお前の毒となろう。」
「ピースを全て揃えればいい話だ。いづれ必ず手に入れる。」
「渡すつもりはないのだな。」
「ああ。」
魔術師は後ろを振り向くことなく、モヤになってその場から消えた。
人間の臭いが消えたと同時、建物を殴る手をピタリと止めた鬼妖はしばらく固まっていたが、踵を返してのっしのしと去って行った。
ふぅとわざとらしく息を吐いて、再びズボンのポケットに手を入れた。
「草薙には悪いことしちゃったなー。幹部候補がまた減っちゃったよ。」
「申し訳ございません。奴の軽率な行動でした。」
「葛ノ葉のせいじゃないだろ。いい暇潰しにはなったかな。」
ポケットにしまった手の震えを誤魔化すように中で握りしめる。
命を狙われる恐怖は子供の時以来だ。絶対的な力を感じて、古い思い出が蘇ってきて奥歯を食いしばる。
魔術師の相棒は、上手く性質を変えれたようだ。いや、元に戻れたという方が正しいのかもしれない。
実に羨ましく妬ましいことだ。
此方は、常に鎖に雁字搦めで動けないというのに。
「君はよかったね。正常に戻せたんだから。」
「吉良様?」
「なんでもない。戻ろうか。」
葛ノ葉を連れ、彼も廃墟群から姿を消した。
*
自室の壁に掛けてある真四角の鏡を覗き込むと、頭の頂点が黒くなり始めているのに気づいた。
白みが強い金色の髪に、地味な黒はかなり浮いて汚らしい。
「髪って伸びるスピード速いよね。染めたばっかりなのに。」
「根元だけお染めいたしますが。」
「まだいいかな。色抜くの痛いし。美季(みき)、何か甘い物ちょうだい。彼の分も。」
「かしこまりました。」
世話係の女が退室し、青いコンタクトをはめて鏡の前から離れる。
部屋の半分を占領している檻の前に立つ。
中にいる少年は読んでいた本から目を離して顔を上げた。黒いまん丸な瞳が吉良を映す。
相変わらず言葉を発しようとしないが、警戒心は初めから抱いていなように見受けられる。度胸があるのか、状況を理解していないのか。
「君は相変わらず無口だね。」
声を掛けると、本を閉じ、膝と体を吉良に向け、袴の裾を整える。
決して整っているというわけではないが、あどけないどこまでも純粋な双眸を見ていると、胸の奥底にしまい込んだドロドロとした液状の本質を追い出したくて仕方がなくなる。見たくは無い。認めたくも無い、感情という不純物。
彼のように綺麗なままで居られたら、この世界も人生も、もっと澄んだ音を奏でていただろうに。
「その時が来たら、僕は迷わず君を死なせるよ。お役目とやらを、果たしてもらう。」
少年がしっかりと首を縦に振って、頷いてみせた。
それは初めての反応であった。
もう決意は固まっているようである。それはどこか残念で、どこかで安心していた。
数秒見つめ合っていたが、吉良がポケットに入れていた鍵で檻を開け、中に入る。
気まぐれの行動にも少年は、また膝を彼に向け直し袴を整える。怯えた様子はない。
いつも鉄格子を挟んで向かい合っていたので、何の邪魔もされず面と向かったのはさらってこの部屋に連れて来た時以来だ。
畳の上にあぐらをかいて、少年の前に腰を下ろした。
「人魚姫って、地上で生み出された創作物を知っているかい?
上半身は人間で下半身は魚の化け物が、人間の男に恋をして、ヒレを差し出して人間の足を手に入れたんだってよ。
おぞましい上に身の程知らずだと思わないかい。人魚は海と声を失って、最後は泡になって消える。その終わりも気に入らないな。綺麗すぎる。」
少年は膝の上でお上品に手を重ね、ただじっと斗紀弥を見つめているだけだった。感想も意見も述べてはくれない。
反応を期待しているわけではないし、気休めも道場も、ましてや慰めなんて欲しくはない。言葉を吐いていたかっただけ。
「僕たち鬼妖という物語があるとして、最後はどうなるんだろうね。
いつかだどりつける夢の国とやらには、門前払いされるだろうな。」
口が止まらなかった。まだ幼い子供に愚痴のような話を聞かせても仕方が無いだろうに。
自分は何をしているのか急に我に返って立ち上がろうとしたところで、それは突然起きた。
「消えたいんだね、あなたは。」
少年が口を開き、声を出した。
子供らしい甲高い声と、見た目に反して落ち着いた話し方。最低限の口の動きで紡ぎ出された言葉は、しかしはっきりと届いた。
突然の行動に目を見開いて驚きを表情に出した吉良だったが、変わらず向けられる真っ直ぐな瞳に安心して、少しだけ首を傾げて微笑んだ。
「そうだね。泡でもなんにでもなって、ここから抜け出したい。」