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♥♦♠♣6


「一体どうなっているんですの・・・?」


フリルが三段重なった青いドレスに黒い上着を羽織り、左目に眼帯をした金髪の少女は、

荒れ果てた部屋のような密封空間を見て唖然と呟いた。
今回のゲームはクラウンシークで、宝を探すため少女も仲間も走り回った。
ゲーム終了のブザーが鳴ったのはつい数分前。
少女は答えが解けぬまま終わるゲームが気持ち悪いので、帰る前に宝が何処にあったのか、

次回クラウンシークがあった場合のデータ収集の意味も込め確認しようと残っていた。
可能性がある場所をいくつか回り、入り組んだ迷路の先に瓦礫が散らばる場所を見つけた。
天井のないその場所は、唯一の出入口を分厚い氷で塞がれており、

隣に誰かが馬鹿力で開けたと思われる大穴があり、そこから内部を覗く。
奥の壁にも同じような穴が置いてあり、左右の壁には氷が張り付いていたり、炎の焼け跡が無数ついていた。
リセル所持者、もしくは召喚士同士が大暴れしたのだろうか。
中央に宝が入れられている木箱もあったが、蓋が空いているので中はカラだろう。
第一、誰かが宝を手にした瞬間ブザーは鳴る仕組みだ。
部屋の荒れ具合に一応納得はしたが、少女はまだ腑に落ちない点を見つけ柳眉を僅かにしかめた。
そもそも、今日のゲームはどこかおかしかった。
前回ゲームから2日しか経っていない点、普段やる気を見せないハートが真っ先に、そして最も好戦的に動いていた点。
現に、あのハートが必死になる景品なのだと他のスートも活発に動いた。
にも関わらず、ハートの参加者は僅か三人。
うち一人は火竜を宿す召喚士。壁の焼け跡は火竜によるものだが、火竜が本気になればこの辺りはもっと荒れているはずだ。
あれだけ宝を欲していたくせに、火竜を本能型に戦わせなかったのはなぜだ?
更に、最も疑問なのは氷の正体だ。
氷雪系のリセル所持者など聞いたことはないし、司令室からの情報で、

火竜の主である<ハートのキング>が対戦している情報入ってこなかった。
少女が属するスペード<ブルーソード>では、誰かが誰かと対戦を始めれば場所を含め報告するようにしている。
<ブルーソード>のナビは気弱な人間だが、戦闘を見逃すようなヘマはしない。
ということは、レーダーに映らなかった人間が?
いや、そんなことはありえない。
ジョーカー経由で流れる映像は公平だし、デッキに降りる人間には必ず発信機をつけるはずだ。
不可解。全てがおかしかった。


「エミちゃーん!」


一人思案に耽っていると、名を呼ばれ顔を向けた。
耳元で結った巻き毛が揺れる。
小走りでやって来たのは、緑髪の少年だった。
あどけない顔と違い、背丈があり体格もしっかりしている。


「此処にいたぁ。また通信機持っていかなかったでしょ?」
「重くて嫌いなんですもの。可愛くないし。」
「通信機に可愛さ求めちゃダメだよ・・・。って、それどころじゃないんだ!<ブルーソード>が襲撃を受けてる!」
「なんですって・・・!?なんでもっと早く言わないの!?ノロマリョクエン!」
「ふぇえー・・・だってエミちゃん通信機を―」
「戻るわよ!説明なさい!」


走り出した少女に続き体を反転してリョクエンと呼ばれた少年も続く。


「ボクもまだよく理解出来てないんだ。ハート内で反乱者が出てハートを壊滅して、

ダイヤに攻めいったかと思えば、あっさり同盟組んで<ブルーソード>に襲ってきたんだって。」
「被害は?」
「西棟やられたぐらいで、例の鉄錠門を下ろしたから進撃は止まってる。大改装したのは正解だね。」
「シベリウスの読みが当たったということですか・・・。隠居したくせに長老の存在感健在ですわね。」
「今はシガウラさんが指揮取ってるよ。役名持ちは集合しろって。

敵は重火器ばっかでリセル所持者はいないらしくて、トキヤ君は喜んで大暴れ中。」
「あら、なら急がずとも、トキヤが一人で何とか片付けるでしょ。鬱憤溜まってるんですから。」


走り続けながら、デッキを抜けスートへの回廊に入ると、確かに火薬の匂いが漂ってきた。
騒音や罵声もどんどん近くなる。


「リョクエン、ハートは壊滅って言ってたわよね。」
「うん。」
「それはいつ?」
「異変に気付いたのはゲーム終了前。シガウラさんが雇ってる情報屋がそう報告してきたらしいよ。」
「なら・・・あの部屋の召喚士は・・・。」


再びあの半壊した部屋へ意識を飛ばす。
少なくとも、反乱はハートにとって突然であり、火竜の召喚士は無関係。
だが、氷の方はどうだ?
氷を使った人間がハートの反乱分子、もしくはダイヤの人間なら、

反乱を邪魔されたくない<ハートのキング>の足止めをしたとすれば合点はいく。


「やっぱり違和感ばかりですわ。」
「エミちゃん?」
「早くシガウラに情報をもらいたいわ。どうやら、考えてるより複雑な事件が起きてるみたいよ。」
「大丈夫だよ。何が起きようが、ボクがエミちゃんを守るから。」
「・・・フン、リョクエンのくせに。」


口を尖らせながら、どこか嬉しそうな少女は金の巻き毛を揺らしながら走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


夢が覚める瞬間は、どこかフワフワとしていて、止まり木もなく漂う羽のような感覚だ。
此処が現実なのかまだ夢なのかはっきりしないまま、開いた目で辺りを伺う。
体が重い意外に、彼は一番の違和感に気づく。
視野が広い。
ハッとして右目に手を当てる。常に身に付けていた眼帯をしていない。
眼帯などなくとも、右目の視力はゼロのはず。
そこで記憶が一気に押し寄せる。
精霊核を、ユタカを奪われたのだと。
勢い良く体を起こすと、激痛が右肩に走った。


「うう・・・。」


氷の刃で肩を切られた事も思い出す。
ただ、体内に入った氷はもう消えたみたいだ。
息を整えると、今自分が見知らぬベッドで寝ていることを把握する。
ベッドだけでなく、見知らぬ部屋。
上半身は何も身に付けていないが、包帯が巻かれている。


「起きたか。」


低い声がして顔を上げる。
今彼が寝ている部屋の扉が開き、青髪の大男が入ってきた。


「アオガミ・・・!」


警戒を露にし、立ち上がろうとするが、肩が痛みシーツに体が沈んでしまう。


「大人しくしていろ。傷は塞がってない。」
「・・・お前が、やったのか、コレ・・・。」
「ああ。」
「なんで助けた・・・。」


記憶が途切れる直前、アオガミに抱えられたのをなんとか覚えいる。
室内にいるのにサングラスをしたアオガミはベッドに近付いた。


「俺は無駄な殺生はしない。」
「はぁ?いつも俺を殴り続けてたくせにか。」
「あれは、召喚士の足止めを命令されていたからだ。いつもつっかかってきたのはお前だしな。」
「貴様・・・っ!」
「落ち着け。傷が開く。」
「うるさい!今すぐ息の根を・・・!」


痛みに耐えベッドから飛び出しアオガミに襲いかかる。
しかし、彼は長い間片目のみで生活してきたため、バランスが取れず倒れてしまう。


「手間のかかる奴だ・・・。」
「離せ、触るな・・・!」
「今はゲーム中じゃない。目くじら立てるな。仲間の情報も知りたいだろう。」


息を呑み抵抗を止めたリディアは、今度はアオガミの服を掴んで詰め寄った。


「あれからどれぐらい経った!?」
「お前が気を失って15時間といったところか。」
「そんなに・・・!?知っていることを教えろ!ハーティアはどうなった!」
「まずは座れ。」
「いいから!」


アオガミは噛みつくように迫るリディアをサングラス越しに見下ろした。
一拍間を空け、口を開く。


「ハートの一軍が反乱を始め<ハートフェル・ティアーズ>は壊滅。

ハート残党を連れダイヤと同盟を組み、現在<ブルー・ソード>と対峙している。」
「ハートが、壊滅・・・?」
「情報が錯綜していて俺も詳しく話は掴めていない。」
「生き残りはいないのか!?」
「大半は反乱を起こした人間に従ったらしいが、逆らった人間は殺された。」
「・・・っ!・・・ジョーカーは・・・何を、」
「お前も知ってるだろう。ジョーカーはゲーム中の監視以外は公平ではない。反乱も立派な権利だと言って手を出さない。」


青白い顔をしたリディアは掴んだアオガミの襟元を離し、力なくベッドに座り込んだ。


「俺の、せいだ・・・俺がいればハーティアは・・・。」
「反乱を率いているのは<ハートのジャック>だと情報屋が言っていた。」
「そうだ・・・。ツジナミさんが怪しい動きをしてたのを知っていた。知っていて、俺達は何も・・・。」


ふらりと立ち上がったリディアは危ない足取りで歩きだす。


「おい、まだ動くな。」
「行かなきゃ・・・。仲間を放っておいて、俺だけ安全な場所にいられない。」


数歩進んだだけで額に汗が浮かび、足がもつれ膝から崩れた彼を、アオガミが咄嗟に腕を掴み支える。


「その体でどうするつもりだ。無駄死にしたいなら止めないが、仲間を助けたいならまずは傷を直せ。」
「・・・召喚士でなくなった俺は、無力だといいたいのか・・・。」
「誰もそんなこと言ってないだろ・・・。」


ため息混じりに告げ、リディアを軽々と持ち上げると、ベッドに戻す。


「お前は強い。」
「慰めなんか・・・いらない。」
「そうではない。」
「あんたに傷すらつけられなかったんだぞ。」
「俺が、そのように作られているせいだ。」


いつもと変わらぬそっけないしゃべり方なのに、どこか自虐的な悲しみを感じて、

リディアはサングラスの奥にあるアオガミの目を見た。


「作られ・・・?」
「俺は元々、ジョーカー直属の執行部にいた。」
「そんな組織聞いたことないぞ。」
「当たり前だ。公には公表されていないし、常に影に身を潜めるよう教育されていた。」


アオガミもベッドの端に腰を下ろし、リディアではなく窓の向こうを見つめるように話し出す。


「各スートで、罪を犯した人間や死体の処理はジョーカーがやっていることになっているが、

細かく言うと、兎や猫人間ではなく非公式の特殊部隊が行なっている。それが暗殺・隠蔽専門の執行部隊だ。
大半は捨てられた子供や産後すぐ育児放棄された赤子がジョーカーに育てられ、物心つく前にナイフを握らされる。
感情や娯楽を一切遠ざけ完璧な道具にされる。」
「あんたも、そんな風に?」
「ああ・・・。俺は産まれてすぐジョーカーに引き取られた口らしい。」


アオガミはサングラスを外し、顔をリディアに向けた。
いつ如何なる時も、荒々しい戦闘中でさえ外れることがなかった分厚いサングラスの奥を、リディアは初めて見た。
瞳は、青かった。


「執行部時代に投与されてた薬の後遺症だ。これでも大分落ち着いた。昔は髪ももっと青かった。」


青い瞳の人間はこの世界に居ないことはないのだが、アオガミの目は不自然な色合いだった。
カラーコンタクトをした人間のような、違和感がある。
暗闇でも光りそうな眼は、少々気味が悪い。
だから、常にサングラスを身に付けていたのだろうか。


「感情の無いただの人形を拾ってくれたのは、<ブルー・ソード>前司令塔のじいさんだった。俺を引き取って、人にしてくれた。
だが、未だに感情というものがよくわからん。他人の心など煙を掴むより難解だ。」


サングラスの無い裸眼の青い瞳が横目でリディアを映した。


「お前の心理は俺にとって常に不可解だった。」
「?」
「ゲーム中の殺人は暗黙で認可されてるとはいえ、執行部として命を奪ってきた事を悔い、もう誰も傷つけないと誓った。
だから、痛い目をみれば近付かないとふんで攻撃を繰り返しても、お前はしつこく絡んでくる。」
「か、絡んでたわけじゃない。召喚しない俺を見下してる気がして、ムカついてただけだ・・・。

それに俺はユタカ・・・召喚獣のおかげで超治癒力があったから、何度吹っ飛ばされても問題ない。」
「ああ。だからナビにはいつも、召喚士<ハートのキング>の相手を任されていた。・・・正直、戸惑っていた。

どう対処していいか、わからなかった。」
「・・・。」
「肉体強化された俺に敵うわけないのに、いつも真っ直ぐ向かってくるお前を。だから助けた。」
「それが理由だって言いたいのか?」


それには答えず、サングラスをまた掛けながらアオガミは立ち上がった。


「着るものと、食事を持ってきてやる。」
「ま、待て・・・!」


と、部屋を立ち去る背中を呼び止めるリディア。


「あんた、真名は?」
「・・・タカヒトだ。じいさんがつけてくれた名だがな。」


真名を聞いたリディアは、突然クスクスと笑い出したので、アオガミは不信がって眉を寄せた。


「何だ・・・。」
「いや、ごめん。おかしくて。俺達、似た名前だったから。」


迷いが消えた真っ直ぐな瞳で、アオガミの青い瞳を見上げたリディアは少し笑いながら言った。


「俺の・・・いや、僕の真名はマヒトだ。」



 

 



「僕はこの世界の人間じゃない。」


アオガミが持ってきた食事を食べながらリディアは唐突にそう放った。


「・・・。」
「別に信じなくていい。アオガミが過去話してくれたから、僕も話す。平等じゃないと気がすまない。」
「わかった。」


食事の乗ったトレイをサイドテーブルに置き、フカフカのクッションに背中を預けた。


「始まりは7年前、何の前触れもなく訪れた。僕と、僕の世話係だったアカネ―<ハートの2>だよ―は

ハーティアの居住棟に倒れていた。始めはどこか遠い場所に移されただけかと思ってたけど、どうやら違った。
僕がいた世界と、この世界は広さも仕組みも全く違うと気付いたんだ。
例えば天井。この世界にソラがない。」
「ソラ?」
「頭上に蓋が無いんだ。青くて、白い雲が流れてるんだ。此処は風も、夕日も無い。」
「初めて聞く単語ばかりだな。」
「こっちには無いからね。」
「それで、どうしてお前達はこちらの世界に来たんだ。」


ベッドに腰掛け携帯端末をいじっていたアオガミは、話に興味を抱き始めたらしく、画面を閉じた。


「わからない・・・。世界を越えて来た副作用なのか、僕もアカネも記憶の大部分が抜け落ちているんだ。

残ってるのは僅かな思い出だけ。まぁ、僕一人じゃなくて良かったよ。別世界に一人飛ばされてたら狂ってしまっていた・・・。」


自嘲気味な笑みを溢すが、すぐ顔を上げ話を続けた。


「ただ、この世界に呼ばれたきっかけは分かってるんだ。7年前、この世界のゲーム中に、

ある人がある宝を手にした瞬間、世界線が書き変わったらしいんだ。
その人は元々別のスートにいたのに、気付いたらハートの一人になっていた。
さらに、家族がいたんだけど、その瞬間を境に関係性が切れ、赤の他人になっていた。
周りの記憶改竄もされてたみたいで、今まで敵だったハートの人員はその人を味方として、

まるで古い友人の一人のように迎えいれていた。」
「宝のせいで、関係性や生い立ちが変えられてしまったということか。」


リディアは頷く。


「極めつけは僕ら。全く別の世界から来た僕らも、ハートの人達は温かく接してくれてたよ。顔すら知らなかったのにね。
あの人は、会った時ずっと謝ってた・・・。あの宝を手にしたせいだって。
もちろん原因がその宝かわからないし、当然その人は悪くない。
だから僕らは、まずその宝を調べることにしたんだ。名称は不明だが、金の杯型。アオガミ、知ってる?」
「見たことないな。」
「だよね。」


ふう、と過去の苦労を思い出したのか、思わずため息が漏れる。


「ハート中の文献探したり、聞き込みをしてもダメだった。杯の情報は得られない。
けど、ある時“インフィニティ”というこの世の全てを知り、全てを答えてくれるっていう存在がいて、

ゲームの宝として出品されている事を知った。
初めにインフィニティに会ったのは僕がこの世界に来て一年経った頃。
僕はまず世界線が変わったのは杯のせいかと聞いた。インフィニティはそうだと答えた。
次に、また杯に触れれば世界線は戻るのかと聞いたんだけど、答えは得られなかった。
そのインフィニティは高度な偽物商品だったんだ。
でも偽インフィニティは、本物はパンドラの箱に入っていると教えてくれて、やっと本物に会えたのは、昨日だよ。」


アオガミの頭の中で、謎が一つ解けた音がした。
昨日のゲーム、普段自由主義でまとまりのないハートが、かなりのやる気を見せていた。
<ブルーソード>も、ハートが狙う宝なら余程の大物だろうと釣られていたが、当の本人達はもっと別のベクトルで動いていたようだ。


「昨日はね、杯を手にした人の許しを得て、インフィニティに僕の世界の事を聞いたんだ。」
「・・・。」


声の出し方が変わった。
執行部でありとあらゆる訓練を受けてきたアオガミは、リディアの変化に気付いた。
その先を聞かずとも、声のトーンで読めてしまいそうな。


「僕に元の世界の記憶は殆ど無い。けれど、母さんの面影を覚えてるんだ。

笑顔が素敵で、温かく両手を広げてくれてる母さんの光景。それが唯一の記憶。
だからインフィニティに聞いた。母さんは無事なのかって。

そしたら・・・っ、僕の世界は、植物も生物も、歴史すら全て・・・滅んだって・・・!」
「もういい・・・。」
「僕は、帰るために、母さんに会うために7年も頑張って来たのに・・・!」
「リディア、」
「帰る場所も居場所も無くして、これから一体どうすれば・・・っ!」


シーツを掴み溢れる涙を流しだしたリディアを、アオガミはそっと抱き締めた。
大きな力を持っていたはずの召喚士は、今はもうただの子供に見えた。
もしかしたら、この子の時間は7年前から動いていないのではないか。
そう思うと、何故か辛かった。


「生きる意味ならこれからいくらでも見つけられる。まずは、仲間を探すことじゃないのか?」
「アオガミ・・・。」
「お前にはまだ、仲間がいるだろ。」


肩の力を徐々に抜きながら、リディアもアオガミのシャツを掴んだ。


「うん。」
「確か<ハートの2>と<ハートの10>だったな、昨日のメンバーは。」
「そうだよ。二人とも、ずっと僕を支えてくれて・・・」
「手合わせした<ハートの10>は強かった。改造された俺でさえまんまと逃げられた。

なら、きっと無事だろう。情報屋に言って仲間にお前が此処にいると知らせてやる。安心しろ。」
「うん。ありがとう・・・タカヒト。」


つい昨日まで敵同士で、一方的ではあるが憎んでいたはずの相手にあやされ、リディア―マヒトは瞳を閉じた。
なぜか凄く、安心したからだ。
7年の呪縛から、解放されたからかもしれない。
気付いたら彼は、そのまま眠りについていた。

 

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