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❀ 2-9

 

「カンーパーイ!」


進級試験も無事終わり、7月に入った。
すっかり3人の秘密基地となった森の中にある池の畔で、ジュース缶で乾杯をした。
この日、彼らはめでたく5学年Ⅱへの進級を決め、さらにまた同じクラスになったお祝いをしていた。

同じクラスというのは、さすがに作為を感じるが、むしろ感謝すべきポイントなので何も言わないことにした。


「リヒト先輩も来られたらよかったのですけど。」
「誘ったんだけどね。卒業試験対策で忙しいみたい。」
「リヒト、卒業しちゃうんだね。寂しい。」
「僕も。」
「わわわ私もですっ!」

 


リヒトの尽力により、ルフェは無事実技試験を突破。
ジノとマリーも試験に受かり、3人仲良く進級出来たのだ。

 


「5学年になったら、また必修科目が増えるんだよね。」
「そう、学科も実技も内容が濃くなって、上手く授業を組み立てて単位を取っていかないと、次の試験までに間に合わなくなる。」
「ジノ、最短卒業狙ってるの?」
「そういうわけじゃないけど、挑戦は続けたいかな。」
「が、頑張りましょう!また私達で頑張れば、なんとかなりそうな気がしてるの。」

 

ルフェもそんな気がしてきた。
ずいぶんお気楽な考えだとは思うが、2人がいれば本当に頑張れる。
2人が進むなら、私も進みたい。そう思えるようになっていた。
お昼休みを利用したパーティーはお開きになり、ルフェはタテワキ先生との実技授業のため2人と別れ、
森の中にある特製特訓小屋に向かった。
小屋の前ではすでに猫背のタテワキ先生が到着しており、ルフェの姿を確認すると扉の鍵を開けて中に入っていく。

 


「まずは、進級おめでとう。
俺としては、もっとゆっくりマナを学んでもらうつもりだったけど、5学年に上がったからには、実技もスピードアップしていくよ。」
「はい、お願いします。」


じゃあ早速、とタテワキが指を鳴らす。
すると、訓練小屋内部の壁が押し込まれたように移動し、部屋が先ほどの倍以上広くなった。
これもマナで構築した仮想空間なのだろう。

 


「キルンベルガー君のおかげでマナをどう操作するかって感覚は掴めただろ?次は出力だ。」

 


タテワキが手に杖を握り、杖の先にマナを込めると、予告無しにルフェに向かって投げつけてきた。
猛スピードで迫る青紫の球体を本能で避けたが、次の球体が同時に3つ迫ってくるのが見えた。
先生お得意の、体で覚えろというやつか。
ルフェも杖を出現させ、自分のマナを込めて青紫の球体にぶつけて空中で爆発させる。
次々遅いかかってくる球体を避けながら、どんどんと大きくなり出力が上がる弾に対応していく。
タテワキが放つ攻撃が出力2なら出力2の弾を、出力5には出力5の弾を。
攻撃を全てぶつけて爆発させていく。
どんどんと出力とスピードが上がる弾についていけなくなると、ルフェの体に弾が当たるようになってしまった。
痛覚はないのだが、当たった箇所に衝撃が襲うのでバランスが崩れ床に転がってしまう。
手を突いた所に、ひときわ大きな弾が眼前に迫り、ルフェは見事に被弾。肩を思いっきり押された感覚に転んでしまった。


「すまん、やり過ぎた。」


焦った顔のタテワキがルフェの前に座り、手を差し伸べる。
彼の手を借りて立ち上がると、スカートをはたいた。仮想空間内なので埃は付いてないのだが、癖で。

 


「大丈夫です。」
「思ったより君が動けたから調子に乗った。狙いも的確だし。迷いも無くなったね。」
「先生、私、目標が出来たんです。進級するときは友達と一緒がいいんです。
置いていかれたくないので怖いだ何だって言ってる場合じゃ無いなって。」


杖を強く握る、ルフェの力強い瞳に、タテワキは眼鏡の縁を指で押し上げ、ニヤッと笑った。
生きることすら消極的だった子が、一生懸命生きようとしている。
ならば、自分が成すべきことは一つ。


「手加減しないで行くよ。全力でおいで。」
「はい!」

 


それから、タテワキ先生との実技授業が毎日入るようになった。
午後になると特訓小屋でマナを杖でぶつけ合う訓練を繰り返す。
タテワキは毎日攻撃方法と出力を変えてくるので、攻撃内容を把握するのが手一杯になってしまい
適応するまでに時間がかかり反撃が中々出来ず、弾を弾で落とすのが精一杯。
大出力対決の時もあれば、各方面から襲ってくる小型弾を操る時もある。
それに慣れたら、今まで一歩も動かなかったタテワキが、空間内に転移していろんな場所から攻撃してくるようになった。
ルフェはまだ転移が使えないので、瞬間移動してくる先生に直接組み敷かれて降参する日もあった。
中々反撃出来ない日々が続いていくなか、本日の特訓を終えたルフェにタテワキが言った。

「言い忘れてた。ルフェ。」
「はい?」
「君、今月に入って午後を俺との実技授業に割いたから授業に遅れがある。夏休みは補習授業組んでおいたから、そこで補って。」
「・・・え。」
「それと、8月頭にある課外授業っていうか、学園外での合宿ってのがあるんだけど、それも参加登録しといたから。」
「聞いてないです。」
「だから今言ったでしょ?」

特訓の疲れではない、別の疲労感で膝から体が崩れそうになったがなんとか踏みとどまる。
夏休みを利用して、アンナに会いに行こうと計画していたし、

ジノとマリーは帰省してしまうので、夏休み中に街で遊ぶ約束もしていたのに。
ルフェはアテナの頃と違って学園に軟禁状態ではなく、学園長先生とタテワキの許可があれば外に出られるのだ。
それをこれから話そうと思っていたのに、先手を打たれた。
でも確かに、午後の授業をほとんど出ていないので、必修科目も単位はどうなるんだろうとは思ってはいた。
こんな形で補われるとは。

「まあ・・・仕方ないですよね。私はマナのコントロールが責務だし、だからって単位取らないと進級出来ないし・・・。」
「補習授業さえ出れば授業に出席した扱いになるから安心してよ。それと、この特訓も続けるよ。
学園に生徒がいなくなるんだ、こんな好機ないからね。一気に成長するチャンスだ。」

 



非常に残念だが、こればっかりは仕方が無い。
最近、友達と遊ぶ楽しみを覚えてしまったが、学園に来た本来の目的をおろそかにしてはいけない。
悲しいのは変わらないけど。


「先生、合宿ってどんなことをするんですか?」
「引退した大魔導師先生が、ボランティアで自分の土地に生徒を招いて特別授業をしてくれるんだよ。
学年関係なく、希望者は合宿に参加出来る。俺以外の魔導師から授業を受けるんだ、きっと勉強になるよ。
泊まり込みで3泊4日。俺も同行するから安心しなよ。
他にも学園の成績上位者は参加するって言ってたかな。」
「リヒトもですか?」
「来るんじゃないかな。」


リヒトは8月末にある卒業試験に向けて忙しいらしく、最近顔すらまともに見ていない。
ルフェの監視役はとうの昔に解任されてるのだから、わざわざ4学年の彼らに付き合ってくれるほど、暇ではないのだろう。
4人でお昼を食べるのが当たり前になっていたので、最近凄く寂しいなと思ってはいた。
久しぶりに会えるなら、それはそれで嬉しい。
補習授業の日程や合宿の詳細はまた後ほど、と本日の授業は終わりになった。
小屋を出て、頭上に広がる夕焼けに見守られながら森を抜ける。
もう夏真っ只中。山頂付近なので気候は涼しいのだが、虫の音は日に日に強くなっていく。
熱された空気で深呼吸をしながら、今日も疲れた体を引きずって池の畔に向かう。
タテワキ先生との強化特訓が始まるようになってから、友人2人がいつもの場所で終わるのを待っててくれるようになったのだ。
疲労困憊のルフェを迎えてから、一緒に食堂へ向かうのが日課。
だが、その日いつもの木製テーブルと長椅子が並ぶ場所に2人の姿は無かった。
別か用事か、委員会だろうか。
すれ違いになるのも嫌なので、座って2人を待つ。
夏の夕暮れの風が、そっと吹き抜ける。焼け焦げた匂いが、夏を色濃くみせてくれる。
綺麗な夕暮れを反射する池の水面に癒やされながら、虫の声を聞く。
静かで穏やかな空間に、子供の声が割って入ってきた。

 


「待って~、待ってよ~。」

 


オレンジのふわふわ髪をした少年が、虫網を持ってこちらに向かってくる。
目の前には白い蝶々。
背格好や半ズボンの制服から見て、初等科の子だろう。
初等科の生徒は学園北東のエリアで生活しており、本校舎にはあまり足を運ばない。
カフェテリア等で姿は見かけるが、こんな森の方まで蝶を追って迷い込んでしまったのだろうか。
蝶を捕まえるのをマナで手伝うべきか迷っていると、少年は急に足を止め、ルフェに顔を向けた。
真ん丸の大きな瞳は、吸い込まれそうであった。


「あーーー!!!ルーちゃんだぁ!!」


急な大声にビックリして、ルフェの肩が跳ねた。
蝶も空高く飛んで逃げてしまい、水面も僅かに震えた気がした。
手にしていた虫網はマナで作ったモノらしく、男の子は虫網を消してルフェに走り寄ってきた。

 


「こんなとこで会えるなんて運命感じちゃうなぁ!」

 


間近でキラキラした瞳に見つめられたじろぐルフェ。
おもちゃを前にして興奮しているような、純粋な瞳を真正面から堂々と受けた経験など無くて戸惑ってしまう。

 


「近くで見ると可愛いねルーちゃん!ねぇねぇ、此処で何してたの?」
「えっと、休憩・・・。」
「ずっとルーちゃんとお話ししたかったんだけど、リッキーが駄目だって許してくれなかったんだよー。」

 


口をとがらせる男の子。
どこかで見たことあるような気がしてきた。
ふわふわのオレンジの髪、リッキーという呼び方。
大魔法運動会、最後の競技でリヒトと一緒に登場した―・・・。

 


「貴方、ココロ、さん?」
「そう!覚えててくれたの!?自己紹介もしてないのに!うれしーっ!」
「あの、でもあの時より、小さくない?」

 


あの時ちゃんと紹介されたわけではないが、学園のナンバー4だとレオンが言っていた。
マナによる攻撃も身をもって体験したが、凄まじいものだったと覚えてる。
しかし、目の前で嬉しそうにぴょんぴょん跳ねてる少年はどう上に見繕っても10歳。
競技場で邂逅したココロというナンバー4は、もう少し背が高く年上に見えたと思うのだが。


「そっか!ルーちゃんと会ったのはあっちの姿だったね。」


ルフェに歩み寄っていた男の子が一歩下がって、右腕を上に掲げる。
すると、頭上からオレンジの粒子が一筋の線となって彼の体をぐるぐると回る。
粒子の筋が消えた時、そこにいたのは14,5歳ぐらいの少年だった。
ルフェが競技場で見たココロという生徒の姿だ。
まあそれでも小柄なことに変わりはなく、背もルフェとそう変わらないだろう。

 


「じゃあ自己紹介!僕は6学年Ⅱのココロ・アルトマン、15歳!
ちょっと事情があって、超飛び級で6年生やってます。」
「あ、そうなんですね・・・。私は―」
「ルーちゃんのことはよく知ってるよー!僕もアテナ女学院との交流会行きたかったんだー。
ちょうどインターンシップに出てたから選抜メンバーから外れちゃってさ。
女の子が沢山いる学校なんて、楽しそうだったのに!いい匂いとかしたんだろうなぁ。」

 


とんでもない発言をしたのだろうが、可愛い顔で可愛く言うから若干やばさに鈍感になってしまう。

 


「僕のことはココロって呼んで!敬語もいらないからね。」
「わ、わかった。」
「ねぇルーちゃん。ルーちゃんはマナの塊って言われてるんでしょ?
ウィオプスも退治出来るらしいし、気になるなぁ~!僕と手合わせしてよ。ルーちゃんの能力気になる!」

 

まるで弾丸のように次から次に言葉を投げつけられルフェは戸惑うしかない。
一度にこんなに話す人は初めてだ。
距離もやたら近いし、キラキラした純粋な目で一気に喋られるとどうしたらいいかわからなくなる。

 

「いいこと考えた!僕と一対一のブロールやろうよ。気絶させた方が勝ち!」
「私、ブロール宣言からは除外されてて・・・。」
「えー!?レオっちと同じってことー?じゃあ普通に戦えばいいや。杖でやる?アセットでも―うわっ!」

 


突然、ココロが宙に浮かんだ。
首根っこを掴んでルフェから引き剥がしたのは、不機嫌そうな顔をしたレオンだった。

 


「おいこら。お前は無許可の戦闘禁止令出されてただろうが。」
「離してよー!ボクだってルーちゃんと遊びたいのー!」

 


襟首を持ち上げられながらジタバタと暴れるココロだったが、またオレンジの粒子が舞って
先ほど見た10歳ぐらいの姿に戻ってしまった。
幼い子供の姿だと、さらに抵抗は弱々しく、端からみていると可愛らしい。

 


「学園長先生に言って、本格的にルフェとの接触禁止魔法掛けてもらうぞ。いいのか。」
「うぐ・・・。」

 


頬を膨らませて拗ねたココロは、泣いてしまうんじゃないかというぐらい

眉根を寄せてレオンを睨み付けたが、その表情に効果はないと悟ると
レオンの手の中でくるりと一回転をして手から逃れると、地面に着地をしたときオレンジ色の犬になっていた。
フン、と鼻を鳴らすと走ってどこかへ去ってしまった。
変身魔法だ。
まったく、とレオンがルフェの隣に腰掛けた。

 


「何かされなかったか?」
「大丈夫。ちょっと、驚いたけど。」
「アイツは別の意味合いで問題児でな・・・。無邪気なんだが、とにかく好戦的なんだ。
ルフェの存在を知った時にいの一番に接触しようとしてタテワキ先生にこっぴどく怒られたんだ、マナで。」
「あの子、本当にナンバー4?」
「ああ。実力は本物だ。多少気まぐれが過ぎるがな。」

 

とにかく、とレオンがルフェの頭に手を乗せた。

 


「次ココロに合っても相手しなくていいからな。」

 


そう笑うレオンの笑みが、やけに疲れていたのでルフェは違和感を覚えた。
力がこもってないというか、彼が元々持っていたカリスマ性みたいな凄みが無い。

 


「レオンも、何か特訓でもしているのですか?」
「なぜそう思う。」
「ずいぶん弱々しく見えます。」

 


俺が?と驚いた表情を見せたが、すぐ豪快に笑って見せた。

 


「ちょっと外部の仕事をしてきただけだ。6学年は授業外で色々あるからな。」
「そんな調子で、卒業試験は大丈夫なのですか?」
「ん?俺はまだ卒業しないぜ。というか、出席日数足りなくて卒業出来ないんだわ。」
「そうなのですか。てっきり、リヒトと一緒に卒業してしまうのかと。」
「なんだー。寂しいのかー?」
「いえ全然。サボってばっかいるからですよ。」
「サボってはいねぇって!俺にも色々あるんだよ。」

 


その色々、をルフェはなんとなく知っている。
貴族家の嫡男であるレオンはこなさなくてはいけない役目があり、時々学校を抜けて実家に戻っていると聞く。
貴族にも色々あるだろうが、飄々とした態度にリヒトを始め他の生徒は気に入らないところが出てきてしまうのだろう。
この学園で、レオンもルフェと違った意味合いで孤立気味なのを感じてはいた。
しかもこの大人は、本心を中々見せたがらない。
笑いながらルフェの髪をかき混ぜてはいるが、やはり笑顔に覇気が無かった。
今はせめて、普通に接してあげるのが正解なのだろう。

 


「レオンも、8月の合宿に参加するのですか?」
「ルフェ、参加すんのか?」
「はい。強制的に。」
「じゃあ俺も行くわー。」
「別に無理に参加しなくても・・・。」
「俺がいなきゃルフェは力使えないだろー?俺が抑えてやるって約束だからな。」
「大分マナを使えるようになりましたし、タテワキ先生も一緒なので問題ありませんよ。」

 

寂しいこと言うなよー、と抱きついてきそうなレオンの顔を押しのけていると
視界に一匹の蝶が入ってきた。
先ほどココロが追っていた蝶と同じに見える。
はて、それにしては発光しているような―・・・。
ルフェ、と名前を呼ばれレオンに抱き上げられたと思ったら、爆発音が響き、先ほど居たテーブルの近くの土がえぐれていた。
遠くに着地するレオンの腕の中で、辺りを見渡す。
白い蝶が、池の周りを飛んでいる。一匹ではない。何十という発光する蝶が池の周りをひらひらと飛んでいた。
ルフェもこの異常状態を把握した。なんだろうこの違和感は。

 


「これ・・・仮想空間の中?」
「違う。固有結界内だ。現実の世界に結界を張って俺達を閉じ込めたんだ。」
「誰が?何のために?」
「わからんが、今の一撃は確実に当てるつもりだった。ココロかと思ったが、どうも違うらしい。殺意を感じる。」

 


レオンが辺りを警戒する。
守られながら、ルフェは嫌な感覚がどうにも抜けないのが気持ち悪かった。
何だろう、身に覚えがあるような、このもどかしい感じ。
レオンがまた高く飛ぶ。再び今居た箇所がえぐられ、次の攻撃をレオンがマナのシールドを張って防ぐ。
空中から見る池の畔は、蝶が舞ってる意外違和感は見られない。
見慣れた光景。
だが、水面が全く動いておらず、風も無ければ木々の葉が揺れる様子もない。
なにより、虫の声が一切聞こえない。
レオンが着地して2人を囲むようにシールドを展開した。

 


「時が、止まってる―。」
「お、気づいたか。空間事切り離されたみたいだ。」

 

空間を切り取るなど、高等魔法だ。
普通の魔法使いぐらいじゃ扱えるはずがない。魔法院の人間か、魔導師クラスでないと。
ならなぜ今、クロノス学園でそんな攻撃を受けているのか。
胸がざわざわする。
理由がまったくわからないけど。
レオンのシャツを強く握った時、ガラスが何枚も同時に割れる音が爆音となって響いた。
思わずガラスの破片が降ってくるんじゃないかと身構えてしまったが、
目の前から蝶が消え空からタテワキ先生が降りてきた。
虫の音が一気に押し寄せ、風を感じた。
ずいぶん焦った顔のタテワキ先生が2人の元に駆けつけルフェの顔を覗き込む。

 


「無事か。」
「先生が結界破壊してくれたんスか。助かりましたよ。内側からどうこう出来なさそうだったし。」
「君がいてくれて助かったコルネリウス君。痕跡が残ってる内に術者を追う。」

 


早口でそれだけ言い残し、先生は転移魔法でどこかへ行ってしまった。
大丈夫か、と肩に手を添えられて初めて自分が震えているのに気づいた。
震える両手を合わせてぐっと胸に近づける。
ざわざわが収まらなかった。
突然の攻撃や閉じ込められたことに震えているのでは無い。
この感覚を、自分は知っている。
知っていて思い出せない。

 


『レオン、聞こえるかしら。ルフェごと呼ぶわよ。』

 


学園長先生の声が頭に直接聞こえたと思ったら、次の瞬間には学園長室にいた。
転移魔法で2人ごと移動させてくれたのだろう。
レオンがソファーに座らせてくれて、秘書の人が紅茶を淹れてくれた。
体の震えは、もう収まったようだ。
電話で慌ただしく指示を出していた学園長が、自分のデスクからルフェの相向かいに移動して
ルフェの顔を覗き込んだ。

 


「顔色が良くないわ。」
「落ち着きました。もう大丈夫です。」
「学園長、先ほどの攻撃は一体誰なんですか。」

 


真面目な顔になったレオンの問いかけに、学園長は更に顔を引きつらせた。
外はもう夕日が沈み、藍色のカーテンが空を覆っている。
学園の中からは、平和な学生達の声がしている。
先ほどまであった日常が、突然遠くにいってしまったような。

 

「隠しても仕方ないから、正直に話すわ。あれは、外部から侵入した誰かの仕業。
今タテワキ先生が追ってくれてはいるけど、まだ帰ってこないということは、相手は相当な手練れ。」
「この学園内に侵入とか、不可能に近いのでは?だって学園長は―」
「私も予期してなかった侵入者よ。私の術を掻い潜れるとしたら、私以上の術者。
もしくは―これは考えたくないのだけれど―生徒が誰かを引き連れたか。
あいにく、この学園に掛けた術は生徒には無害ですからね。」
「俺かルフェを狙ってたってことでいいんスか?」

 

そうね、と学園長は苦い顔をして両手を膝の上で組んだ。
綺麗な顔が悔しさで歪んでしまっている。

 


「相手は確実に攻撃を当てる気でしたよ。」
「こんなことになってしまってごめんなさい・・・。今事態を把握すべく各所を動かしてるから、もう少し待って頂戴。」

 


それまでは此処で待機するように、と言い残し学園長先生は一度退室していった。
はぐらかされたことにレオンは苛立っていたが、ルフェはある違和感に気づいて顎に手を当てた。

 


「ねえレオン。白い蝶が沢山いたでしょ?」
「ああ、いたな。」
「あの蝶、ココロが追いかけてたんです。虫網で追いかけてるうちに私に会って蝶から興味移ったみたいですけど。」
「・・・なるほどなぁ。あのココロが興味を示した時点で普通の蝶じゃなかったってわけだ。
蝶の形をしてたおかげでココロが来て、俺が助けに入った。ココロには感謝だな。」
「それに、いつもならあの場所にジノとマリーがいたはずなのですが、2人ともいなかった。
私に言伝もなしに2人同時にいないなんて、偶然とは思えません。」
「人払いも済んでたと・・・。狙いはルフェの方か。いや、同時に2人って可能性もあるな。」
「まだわかりませんが、私―」

 


言葉の途中で、学園長先生とタテワキが同時に部屋に入ってきた。
2人とも苦い顔をしているので、成果は得られなかったのだろう。

 


「高位魔導師の目を欺くって、どんな相手ッスか。」
「同じ高位魔導師か、大老師レベルの魔法使いかもね。上手に痕跡を消して、デコイまで設置していたよ。
俺を引き離してルフェを狙う線もあったから、一度戻ってきた。」

 


レオンが蝶の事を仕え、これが計画的犯行で、ルフェの動向を観察した上での犯行であると進言し先生2人はさらに難しい顔をした。
しばらく議論を交わした後、とりあえず今夜2人はこの特別棟で宿泊するよう言われた。
特別棟の中には来賓用の客室もあるのでそこを借りることとなった。
ルフェの部屋をレオンとタテワキで囲み、異常があれば対応するとのこと。
来賓用客室は、寮の部屋よりよっぽど立派で、使うのがためらわれるほど綺麗だった。
家具もベッドも上質で高級感があり、どうも落ち着かない。
夕飯を運んできたタテワキ先生は、申し訳なさそうに言った。

 


「すまない。俺がついていながら、こんな目に遭わせて。」
「大丈夫です先生。」
「友人2人にはマナが暴走しかけたから学園長先生と俺で今夜は隔離するって説明しといた。侵入者が来たなんて、言えないだろ?
不安かもしれないが、少し我慢してくれ。俺は隣にいるから、何かあったらすぐ呼ぶんだよ。」

 

不安そうなのはタテワキ先生の方だとは言えなかった。
ルフェは、もう今夜は襲撃はないだろうと確信していた。
胸がざわつく感じがまったくしなくなったからだ。
この違和感を上手く説明出来たらいいのだが、今はいい表現が見つからないので、黙っていた。
その夜は本当になにも無く過ぎ、翌日も何も起きなかったのでひとまず2人は解放された。

 


「原因、わからなかったみたいですね。」
「学園長先生が結界を三重にしたから、学園内に居れば安心だとさ。大人がずいぶん動いてるみたいだな。
当事者の俺達からしたら、スッキリしねぇけどな。」
「大丈夫。狙われたの、私だと思う。」
「なぜそう思う?」
「なんとなくです。」
「・・・結界をいくら重ねても、学園に入った時点で安心じゃない気がしてきたぜ。」
「都合がいいことに、もうすぐ夏休みでほとんどの生徒が帰省します。万が一の場合はマナの放出を許可してもらいました。」
「お前が力を使う前に気絶させられたりしたらどうするんだよ。」
「私は学園長先生もタテワキ先生も信じてます。それに、」

 


遠くから、ルフェを呼ぶ声がした。
ジノとマリーが掛けてくるのが見える。

 


「それに、レオンがまた助けてくれるんですよね。」

 


ルフェの言葉に、レオンは頭を掻いて、盛大にため息をついた。

 


「いつからそんな可愛い技を身につけたんだか・・・。」

 


じゃあな、とレオンは去って行き、入れ違いに友人2人が掛けてきて
不安そうな顔のままマリーが抱きついてきた。
戻らぬルフェにだいぶ不安を感じてくれたようで、安心してとなだめるため笑った。
2人には、襲われた件は言えない。言ったらまた不安にさせる。
自分の知らないところで、何かが起きているのをルフェは感じていた。
この2人は巻き込めない。

 


「聞いたよルフェ。8月の合宿参加するんだって?」
「強制参加だけどね。」
「わ、私達も、申し込みしてきたの!」
「そうなの?」
「夏休みが始まったら家に帰らないといけないけど、合宿で会えるよ。」
「ルフェ、補習授業で外に出られないんでしょ?早めに戻ってくるからね。」
「気にしないで。実家でゆっくりしてきてよ。家族を安心させてあげなきゃ。」
「寂しくて泣かないでね、ルフェ。」

 

泣かないよ、と笑ってみせる。
もし夏休み中に狙われることがあれば、2人がいない方が好都合だ。
自分のマナで友人を傷つけたくはないから。

 

 

 

 

 


ディア アンナ

元気ですか。
夏休みを利用してアンナに会いに行こうと計画していたのですが
補習授業が重なって夏休みがなくなってしまいました。
とっても残念です。
でも、おかげでマナを大分上手に扱えるようになりました。
勉強もなんとかついて行けているので、来年の春に卒業試験を受けられたらいいな、と思っています。
それから、前の手紙で紹介した友達2人といつか会ってほしい。
とても優しく頼もしい友達です。
アンナとも気が合うと思います。
また手紙を書きます。

 

 

 


クロノス学園も夏休みに入った。
普段山の中に閉じ込められている生徒達も山を降りて実家に帰省する。
校内は非常に静かだった。
今はセミの方が元気だ。
ルフェのように補習を受ける生徒や、帰省しない生徒は一握りのようで、校内で人とすれ違うのも珍しくなっていた。
食堂も一カ所のみの運営で時間は短縮されているし、購買所も時短営業。
アテナ女学院でも、長期休暇の度に静かになる校舎を体験してきたが、
あの時は学院から外に出ることは許されなかったし何も感じなかったのに、静かなクロノス学園は、どこか寂しかった。
小競り合いをする生徒の怒号も、笑い合う声も、何かが壊れる音も聞こえない。
転校してきてまだ数ヶ月だが、ずいぶんクロノス学園に馴染んでしまったんだと実感した。
今日の補習は午前で終わり、食堂でご飯を食べてから学園の中を散歩する。
普段、生徒の目があって中々校内を歩けなかったので、時間があるときは校内を歩き回るのが日課になってきた。
初等科がある丘の下にある憩いの場なんて、お洒落なテーブルと椅子や自販機が置かれ、木陰になっているので過ごしやすかった。
今度ジノとマリーを誘って来てみよう。
午後は何をしようかと考える。
今日、タテワキ先生は魔法院に呼ばれているので実技授業はしてくれないし、図書館も本日は休館日。
寮に帰って勉強でもするか。
でも素直に帰るのもつまらないので、正門を経由して、花壇の花でも愛でながら帰ることにする。
花壇の中にある噴水の水は、夏休み中でも稼働してるので、夏の日差しを浴びてキラキラ輝いている。
名前はわからないが、夏の花たちも綺麗に咲き誇っていて見てて飽きない。
木陰があったら花壇を見ながら勉強するのだが、正門周りは来賓の車が入れるように綺麗に整備されてるため

遮蔽物やベンチは置かれていない。
残念だ。
熱中症になる前に花壇の横を通り過ぎる。
風が吹いた。夏の日中にしてはありえないぐらいひんやりとした風に振り向くと、視界に白い蝶が見えた。
既視感。
まずい、と構えた時には、花壇の一部が爆発して土が舞い上がった。
攻撃が花壇に直撃したのだ。
夏休み前に、池の畔でレオンと共に受けた謎の攻撃だとすぐにわかった。
顔を上げた時には、また蝶が視界いっぱいに飛んでおり、数十匹が空で羽を動かしていた。
今レオンはいないし、タテワキ先生もいない。
だが好都合だ。
ルフェは体の周りにマナを纏った。万が一直撃の攻撃が来てもマナで粉砕出来るように。
手に杖を握り、辺りを警戒する。
再び花壇が攻撃され、噴水の一部も削られたのか、水が空高く噴出された。
光の反射で視線を向けて閉まった隙に、背中側から攻撃を受けて体が吹っ飛んだ。
マナの分厚い膜を纏っていたため痛みは無かったが、地面に転がるのは止められない。
早く立ち上がって姿勢を立て直さなくてはと考えていたら、急に体が持ち上げられて、手を引っ張られた。
その手は振り払わず、導かれるまま花壇の西にある駐車場を抜けてサッカー場とプールの間をくぐり抜ける。
どうやら、今日は結界は張られていないようで、場所の移動は可能なようだ。
時間が止まってる感じもしないのだ。
だが森に逃げ込もうとした所で前方に攻撃を打たれ、手を引いていた人物―グランがルフェを抱きしめながら
飛んで避けると、プールの脇にある茂みに隠れてた。

 


「グラン!敵は私を狙ってるみたいだから、私が囮になる。」
「女の子にそんな危ない事させるわけないでしょ。事情は学園長先生に聞いてる。」

 


グランはポケットに入れていた携帯端末でどこかに連絡を取ると、ルフェを抱き寄せたままアセットを起動した。
彼のアセットは拳銃だった。射撃武器だと弓型が人気だが、銃はマナをかなり圧縮させないと弾丸として機能しないので
あまりセットする人は居ない。それだけ難しいのだ。
銃を構えて、空中を睨み付けるグラン。
隠れていれば攻撃も来ないかといえばそうはいかず、真横のプールの壁がへこんだ。
視界云々じゃなさそうだ、とグランはルフェの肩を抱いたまま茂みから抜けて走った。
サッカー場の脇を走り抜ける間も、攻撃は続いていたが、直撃するような攻撃は無かった。
わざと外しているような違和感がある。逃げるのを楽しんでいるのだろうか。
体が、急に重力から解放される。
グランの手から体が離された。手首と足首に、目には見えない何かが絡まってる感触がある。
見えない縄でどんどん宙に引っ張られ、グランが虚空に向かって銃を乱発するが、見えない標的に当てるのは不可能だった。
遠くなるグランと地面。こうなったらマナを放出させて、と考えている時に、目の前に何かが通り過ぎた。

 


「ルーちゃん、みっけ!」

 


鎌を持ったオレンジ髪の青年が空中で見えない縄を切った。
落ちるルフェの体を、地面に落ちる前にグランが見事キャッチ。
ルフェを助けた青年も着地をした。
オレンジのふわふわ髪、大きな瞳。ココロだ。
だが、身長がかなり伸びているというか、ルフェより年上の立派な青年になっている。
手足は長く輪郭も凜々しい美青年だ。

 


「ココロ、なの?」
「そうだよ~。ボクも学園に残ってて正解だったなー。楽しそうな相手と戦えるんだもの・・・!」

 


ずいぶん成長したココロがまた鎌を構えて空中に飛んだ。
その隙にルフェを地面に下ろしたグランは、彼女の手を引いて森の中へ走った。

 


「グラン、ココロがっ!」
「彼なら大丈夫だから、自分の心配して。」

 


遠慮無く腕を引くので、足が絡まりそうになりながらも必死に走る。
後ろで、木が倒れる音がしたが後方を確認する余裕が無い。
が、グランには何か察したのだろう、またルフェを抱きしめて頭を守ってから、地面を転がった。
土の匂いが一気に近くなった。
グランのうめき声がする。攻撃が当たったのかもしれないが、頭を押さえ込まれているので確認が取れない。
一際大きな破裂音が響いた。
木々の崩壊音と、体に感じる振動。風圧を体に感じた。

 

「まったく、油断も隙も無いわね。グラン、もう良いわよ、大丈夫。」

 


腕の力が緩まって辺りを確認すると、空中に学園長先生が浮いていた。
白いスカートスーツのまま、ふわり髪をなびかせながら赤いネイルの指を振るう。
倒された樹木が持ち上がり、近くに綺麗に積み上げる。
はあ、と息を吐いて起き上がったグランは、力なく地面に座り込んだ。
額に血が流れていた。

 


「グラン!?」
「大丈夫だよ。少し打っただけだ。」
「でも・・・!」
「ルフェは?怪我させちゃった?」
「平気・・・だと思う。」
「ならよかった。」

 


ルフェを安心させるために微笑んだ彼は、アテナ女学院で仲良くなった穏やかで優しいグランの顔だった。
名を呼ばれたのもずいぶん久しぶりだ。
ポケットに入れていたハンカチを差し出していると、学園長先生が隣に降り立った。

 


「グラン、保健室に転移させるわ。エメルにすぐ見てもらいなさい。」
「敵は?」
「消えたわ。暴れ足りないココロがこっちに来る前に飛ばすわよ。」

 

学園長先生が指を鳴らすと、グランが消えた。
残されたルフェの手を取って立たせる。

赤いネイルの指を左右に振るうと、制服についていた土汚れも、膝の擦り傷も綺麗に消えていた。

 


「ありがとうございます。」
「私達も行きましょう。」


また学園長先生に転移させられる。
秘書の人が詰めたいタオルを差し出してくれて、テーブルの上には炭酸水が用意されていた。
冷房も効いていたので、緊張が一気に解かれていく。お言葉に甘えてソファーに座ってタオルで汗を拭いた。
学園長先生は秘書の人にいくつか指示を与えながら、デスクの電話を掛けた。
しばらくその様子を静かに見守る。
電話を切った先生は、疲れたように眉間の皺を赤い爪でもんだ。

 


「トーマを呼んだわ。もう少しここに居て頂戴ね。」
「学園長先生。何が起きたのか、聞いてもいいですか。」

 


じっとルフェを真っ直ぐ捕らえた学園長だったが、視線を外した。

 


「ごめんなさい。当事者の貴方には教えてあげたいところだけど、どうやらそう簡単な問題ではなくなったみたいなの。
大人の私達が対処するまでちょっと待って頂戴。」
「・・・・私はそれで構いません。でも、グランは怪我をして、ココロやレオンも危ない目にあいました。」
「いづれちゃんと説明します。」
「私が居るせいですか。」
「貴方がこの学園に来た目的は何?」

 


きつめの声音で言われ、すいません、と瞳を伏せる。
電話が鳴って学園長先生は対応を続けていく。
汗を掻き出したコップの中身で喉を潤す。炭酸はだいぶ抜けていた。
学園長室に白衣を着ていないタテワキ先生がやって来たのは、太陽が大分西に傾いてからだった。
学園長先生と2,3言葉を交わしただけで、ルフェを連れ校舎の中を辿る。

 


「8月頭に合宿あるって言ったろ?あれの日程を早める。大先生には許可をもらっている。
他の参加者も徐々に集まるだろう。簡単でいいから荷物をまとめてくれ。今夜には出発する。」
「・・・私がいると、また学園が襲われるんですね。」
「ルフェを守るには学園じゃ不十分だ。大先生のところなら今より安心だ。」
「守る?何からです?」

 

白衣も伊達眼鏡もない先生が足を止めて振り向いた。
ひどく辛そうな顔をしていたので、ルフェは発言を後悔した。
謝ろうとしたルフェの頭に手を置いて、その手の上に先生は額を乗せた。

 


「何も言えないんだ。今は、何も言わず俺と学園長先生を信じてくれ。」
「・・・はい。すみませんでした。」
「ルフェが謝ることは何もないんだよ。何もね。」

 


女子寮に辿り着き、先生には入り口で待機してもらって、ルフェは急いで荷造りをした。
予想だと、思ったより合宿は長引きそうだ。
手持ちの着替えを全部と日用品、それから、お守り代わりにアンナからもらったブレスレットを持って行く。
食堂で軽く食事を取ってから、タテワキ先生が運転する車で日が落ちた山を下りる。
学園の外に出るのはウィオプス退治で街に出たとき以来だが、
あの時は転移魔法を使ったので、山道を辿るのは転校以来となる。
助手席から木々が流れていくのを眺めながら、無意識に首から下げたアセットを握りしめた。
何かが起きている。
それはわかっているのに、何もわからない。
自分が生きてるせいで、誰かが傷つく。それは本当に嫌だった。
前向きに、生きていこうと決めたのに。
自分のせいで壊れる何かがあるなら・・・と暗い気持ちになってしまう。
ジノとマリーの顔が見たかったが、今会えばきっと巻き込む。
自分には、もう大事なものは作っちゃいけないのだと言われてる気がして、なんだかとても寂しくなった。

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